ライフ

インプラント治療権威が証言「残せる歯を抜いている実態も」

歯科業界の現状に警鐘を鳴らす小宮山彌太郎氏

 歯科医院の数がコンビニよりも多い(6万8000超)一方、診療報酬は低く抑えられ、多くの歯科医院が経営難に喘ぐ。

 その“救世主”となったのがインプラント治療だ。費用を独自に設定できる自由診療のインプラントに、歯科医が相次いで参入。技術や経験不足、そしてモラルを失った歯科医によるトラブルが続出している。

 日本のインプラント治療の先駆者で、多くの歯科医から尊敬を集める小宮山彌太郎氏(ブローネマルク・オッセオインテグレーション・センター院長)自身も、その実態を目の当たりにしてきた。

「残せる歯が抜かれ、インプラントにされた患者を現実に見てきました。それは医療ではありません。

 例えば、オールオンフォー(※注/片あご12本分の義歯を一体化して4本のインプラント=人工歯根で支える術式)をやっている歯科医の一部は、患者の歯より、インプラントのほうが長くもつとしているようですが、私は違うと思います。

 その方法(オールオンフォー)ありきで歯を抜くのではなく、歯科医は天然歯を残す方向を第一に考えるべきです」

 小宮山氏は、症例によっては無理に歯を残すと周りの組織が失われるケースもあるので、「一概に歯を抜くのが全て悪いとは言えない」とした上で、中には、許されざる強引な手法でインプラントに誘導する歯科医も存在するとした。

「歯を抜く時に麻酔をして、患者の承諾もなしに勝手にインプラントを埋めてしまう。そして、後でインプラントを埋めましたと告げる。

 もちろんそんな治療は望んでないから嫌だという患者もいる。その時はインプラントを撤去し、メーカーに『インプラントが脱落してしまった』と虚偽の報告書を出して新品と交換させるのです。そうやって、その歯科医はインプラントの患者を無理矢理に増やしている。そこまで地に落ちたということです」

 また、抜かずに済む歯をインプラントにされた患者も存在したという。

「奥から2番目の歯、第一大臼歯がなくて、ブリッジが入っていた患者です。ある歯科医が、古くなったという理由で、そのブリッジを外し、『左右の歯に、それぞれ独立したクラウン(被せ物)を入れて、真ん中はインプラントにしましょう』と勧めたそうです。

 その結果、手術に失敗して、私のところに紹介されてきました。もともとブリッジが入っていたのだから、常識的に考えて、もう一度型を取ってブリッジにするのが妥当ですが、この歯科医は(インプラントに)誘導したかったのでしょう」

●文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班

※週刊ポスト2016年9月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

公選法違反で逮捕された田淵容疑者(左)。右は女性スタッフ
「猫耳のカチューシャはマストで」「ガンガンバズらせようよ」選挙法違反で逮捕の医師らが女性スタッフの前でノリノリで行なっていた“奇行”の数々 「クリニックの前に警察がいる」と慌てふためいて…【半ケツビラ配り】
NEWSポストセブン
「ホワイトハウス表敬訪問」問題で悩まされる大谷翔平(写真/AFLO)
大谷翔平を悩ます、優勝チームの「ホワイトハウス表敬訪問」問題 トランプ氏と対面となれば辞退する同僚が続出か 外交問題に発展する最悪シナリオも
女性セブン
日本一奪還に必要な補強?それともかつての“欲しい欲しい病”の再発?(時事通信フォト)
《FA大型補強に向け札束攻勢》阿部・巨人の“FA欲しい欲しい病”再発を懸念するOBたち「若い芽を摘む」「ビジョンが見えない」
週刊ポスト
2025年にはデビュー40周年を控える磯野貴理子
《1円玉の小銭持ち歩く磯野貴理子》24歳年下元夫と暮らした「愛の巣」に今もこだわる理由、還暦直前に超高級マンションのローンを完済「いまは仕事もマイペースで幸せです」
NEWSポストセブン
ボランティア女性の服装について話した田淵氏(左、右は女性のXより引用)
《“半ケツビラ配り”で話題》「いればいるほど得だからね~」選挙運動員に時給1500円約束 公職選挙法で逮捕された医師らが若い女性スタッフに行なっていた“呆れた指導”
NEWSポストセブン
傷害致死容疑などで逮捕された川村葉音容疑者(20)、八木原亜麻容疑者(20)、(インスタグラムより)
【北海道大学生殺害】交際相手の女子大生を知る人物は「周りの人がいなかったらここまでなってない…」“みんなから尊敬されていた”被害者を悼む声
NEWSポストセブン
医療機関から出てくるNumber_iの平野紫耀と神宮寺勇太
《走り続けた再デビューの1年》Number_i、仕事の間隙を縫って3人揃って医療機関へメンテナンス 徹底した体調管理のもと大忙しの年末へ
女性セブン
チャンネル登録者数が200万人の人気YouTuber【素潜り漁師】マサル
《チャンネル登録者数200万人》YouTuber素潜り漁師マサル、暴行事件受けて知人女性とトラブル「実名と写真を公開」「反社とのつながりを喧伝」
NEWSポストセブン
白鵬(右)の引退試合にも登場した甥のムンフイデレ(時事通信フォト)
元横綱・白鵬の宮城野親方 弟子のいじめ問題での部屋閉鎖が長引き“期待の甥っ子”ら新弟子候補たちは入門できず宙ぶらりん状態
週刊ポスト
大谷(時事通信フォト)のシーズンを支え続けた真美子夫人(AFLO)
《真美子さんのサポートも》大谷翔平の新通訳候補に急浮上した“新たな日本人女性”の存在「子育て経験」「犬」「バスケ」の共通点
NEWSポストセブン
自身のInstagramで離婚を発表した菊川怜
《離婚で好感度ダウンは過去のこと》資産400億円実業家と離婚の菊川怜もバラエティーで脚光浴びるのは確実か ママタレが離婚後も活躍する条件は「経済力と学歴」 
NEWSポストセブン
被告人質問を受けた須藤被告
《タワマンに引越し、ハーレーダビッドソンを購入》須藤早貴被告が“7000万円の役員報酬”で送った浪費生活【紀州のドン・ファン公判】
NEWSポストセブン