AV史上最大の問題作が『女犯』(1990年・V&R)だった。監督のバクシーシ山下のデビュー作であり、このとき弱冠23歳。無名のAV女優が撮影現場で複数の男たちから挑まれる。
「やりたくない……。帰っていいでしょう」
女は泣き出す。ポンプ宇野という岩のような体格をした男優が「帰れると思ってるの?」と腕をつかむ。
「帰る。帰る」「セックスしようぜ」「やだ! 帰る!」「いい加減にしろよっ!」「いやだー! いやだー! もうやだー!」「静かにしてれば終わるんだよ!」「やだー!」「やらせろよ!」
男たちが現れて次々と泣きじゃくる女を陵辱、女の顔は涙と精液で悲惨な状態になっている。それでも男たちは次々に発射していく。女は放心状態だ。画面は突然暗転し、作品は終わった。
『女犯』を見た視聴者は騒然となった。まさかレイプを目撃してしまったのか!? 警視庁が内偵に入ったという噂まで流れ、女性人権団体がバクシーシ山下監督に、女性蔑視の作品だと糾弾活動が巻き起こった。だが、山下監督は「あれは演出です」とのらりくらりと受け流す。業を煮やしたフェミニストが叫んだ。
「もしもあれがあなたの演出というなら、あなたは黒澤明以上の天才よ!」
『女犯』の真相を山下監督が打ち明ける。