思えば、最終回で視聴率40.0%を叩き出した『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で松嶋さんは、その美意識をぶち破るようなキャラクターを演じました。このように視聴者の志向や見たいものは変わってきているのに、制作サイドがかつての美意識にこだわっているのではないでしょうか。
一方、松嶋さん本人は、バラエティー番組への番宣出演を重ねていつも以上に気さくな姿を見せていましたし、10月からのドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人~』(TBS系)では、ヒロインの菅野美穂さんを苦しめる“最凶の隣人”という悪役を演じるなど、かつての美意識にとらわれている様子はありません。
今年で芸能デビュー25周年を迎えたこともあってか、これまでの「キレイでカッコイイ」イメージや主演女優の座を捨ててでも、新たな魅力を得ようとするスタンスが伝わってきます。今回の視聴率は苦戦していますが、悪役や汚れ役を含めてさまざまな役を演じるであろう、今後の活躍がむしろ楽しみになってきました。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。