そして、土俵上では「相撲講座」として相撲の基礎知識や、所作の説明、相撲甚句などが続く。こうしたイベントは前述した「組合」時代の名残だ。本場所に比べて人気力士が少なくなるため、観客を楽しませようと、本場所にはない要素が加えられた。
午後を回るとメインイベントだ。幕内・横綱土俵入りから、取り組みが行なわれ、最後は弓取り式。基本的に本場所と同じ手順で進行するが、巡業では赤ちゃんを抱いて土俵入りすることがあるのも名物。力士に抱かれた子供は健康に育つといわれるためだが、泣き出す赤ちゃんが多く、戸惑う力士を見て場内は大爆笑に包まれる。
本場所のような張り詰めた緊張感はないものの、こうした力士とのふれ合いを楽しめるのが巡業の最大の魅力だ。
撮影■小笠原亜人矛 取材・文■鵜飼克郎
※週刊ポスト2016年9月16・23日号