「幼少期から“あれをやれ、これをやれ”と全てを手取り足取り指示し、日常生活を丸ごと管理してきたそうです」(別の芸能関係者)
10人に1人の子供が発達障害とされている現代において言葉だけが広く浸透し、少しの成長遅れでも「もしかしてうちの子も…」と心配する母たちが増えた。一方で「大人の発達障害」についての無理解が指摘されている。児童心理司の山脇由貴子氏が語る。
「発達障害は生まれつきのもので、本人の努力で改善するものでも、大人になったら自然と消えるものでもありません。物忘れが激しい、衝動的に動いてしまう、空気が読めない、他者を傷つけることに鈍感など、成人後もさまざまな面で向き合っていかなければならないのです」
◆俳優という職業が鬼門だった
発達障害には「衝動性」「不注意」「多動性」を特徴とするADHD、コミュニケーション障害と共感性の欠落を特徴とするアスペルガー症候群、学習能力に障害があるLD等が挙げられる。
複合的に発症する場合もあり、山脇氏の言うように、先天性の上、成長と共に解消されるものではない。自身もADHDと診断された元メーカー社員のAさん(41才男性)が話す。
「いつまでにこれをやるといったスケジュール管理ができず、エクセルでプレゼン資料を作っていても、別のことが頭をよぎるともう気を取られて集中できない。机の整理も全くダメ。昔からこうだったのですが、あまりにも上司に怒られることが多く、見かねた同僚がすすめてくれたんです。“一度医者に診てもらった方がいい”って。結果はADHD。ショックでした。診断結果を上に伝えた直後に異動を命じられたこともあり、おれはもうダメなんだと自分を追い詰めてしまって…。結局退社しました」
Aさんは以後、派遣社員として働くも、うっかりミスの多さは変わらず、どこに行ってもなじめないまま、入退社をくり返しているという。同様の声はネット上にも多数あり、一様に生きづらさが吐露されている。
《書類をもっと端的にまとめて、と上司に言われても、“端的とはなんだろうか”と延々考え続けてしまい、何も書くことができない》
《場の空気を読めないといわれても、“空気”という概念事態が分かりません》
前出・山脇氏が語る。
「本来、適材適所な仕事があるはずなんです。ADHDであればデザインや企画職などクリエーティブな仕事を、アスペルガーの場合は一つの事に没頭する研究職などが向いています。病気ではなく、その人の特性なので、周囲の人間は彼らの個性を長所にするために何ができるのかを考えなければいけないのです」