──おお、これはうまい! エスカルゴのエキスとバターの風味とスパイスが、まさに伊勢うどんのタレのように濃厚で奥深い世界を作り上げていますね。主人公たちの店では、エスカルゴを伊勢うどんの麺に載せた「ウドネスカルゴ」というメニューが登場しますが、実際にどこかの店で出してほしいですね。

津原:いいですね。今回の作品を描くにあたって、あのメニューがもっとも重要なアイディアだったと思っています。もちろん試作もしましたが、絶品でした。

──伊勢うどんは、かつてに比べれば知名度は上がりましたが、けっしてメジャーな存在とは言えません。エスカルゴも、そのおいしさがまだまだ知られていないし、ゲテモノ扱いする人も多そうです。ふたつが力を合わせることで、大きく飛躍できるかもしれない。その意味で、この作品は両方にとっての救世主だと思います。

津原:いやまあ、そうなれたらいいんですけど。

──きっとなってくれます。青春料理小説の名作としてどんどんどんどん話題になって、やがて映画化されたりNHKの朝ドラになったりすると信じています。今日はお忙しいところありがとうございました。うどんの話題が多めのインタビューで恐縮です。

 讃岐うどん屋の息子と伊勢うどん屋の娘の運命やいかに。それぞれの思いもそれぞれの人生も、エスカルゴの殻のようにぐるぐると回っていきます。随所で声をあげて笑い、おいしそうな描写にお腹が鳴り、気が付くと切なさに胸を締めつけられている。『エスカルゴ兄弟』(角川書店、1782円)で、ぜひそんな気持ちのいい体験を味わってください。

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