ビジネス

奨学金財源 休眠口座や高齢者の金融資産1700兆円活用を

大前研一氏が提案する奨学金の財源案は

 社会の実情に合わなくなり、機能し亡くなり始めた日本学生支援機構(旧・日本育英会)の奨学金の制度を変更し、給付型奨学金の導入を安倍政権が検討している。経営コンサルタントの大前研一氏は、そもそも給付型導入の前に、稼げない教育しかしていない大学教育の責任を問うべきだと考えている。奨学金拡充のために税金を投入する前に、何をすべきかについて大前氏が提案する。

 * * *
 税金を注ぎ込む前に国ができることはまだまだある。たとえば毎年800億円を超えるとされる「休眠口座」(取引が長期間ないまま放置されている口座)に残っている預貯金を若い人たちのベンチャー企業を支援するファンドに活用するとともに、審査を厳しくした上で給付型奨学金の原資として役立てればよい。

 あるいは、すでに本連載で何度も言及している個人金融資産1700兆円の活用だ。その多くはリタイアした高齢者が持っているので、「亡くなった時に資産の1割を将来の人材育成のために寄付する」という制度を作り、寄付を申し出た人には以後、所得税や相続税を減免するなどのインセンティブを付ける。そうすれば最大170兆円がじりじりと出てくるはずだから、それを給付型奨学金にしていくのである。

 そのくらいは高齢者たちが次の世代のために“肥やし”を撒いてくれてもよいではないか、というのが私の提案だ。

 このような工夫をすれば、税金を使って将来世代から借金しなくても給付型奨学金は実現できる。1943年に設立された旧・日本育英会の奨学金制度は、国民の大半が同じような貧しい環境の下で育ち、しかも大学の数も大学まで進学する人数も少なく、大学を卒業して企業に就職すれば必ず昇進・昇給があった時代にできたものであり、すでに歴史的な役割は終わっている。

 したがって日本は大学も奨学金制度も根本から作り直し、能力と向上心がある学生の背中を強く押すための新たな施策を打ち出さねばならない。そこまでやって初めて奨学金というものの意義が生まれるのだ。

※週刊ポスト2016年9月16・23日号

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン