2人世帯なら√2で割って1.4程度、3人家族なら√3で割って1.7程度、4人家族なら2で割ります。例えば、2人家族で年間1414万円が世帯の可処分所得とすると、1.4で割って約1000万円となります。
このように出した日本国民の「一人当たりの可処分所得」を全て大小順に並べて、真ん中に位置するのが「中央値」です。日本国民全体で見て、この「一人当たりの可処分所得」が中央値の半分以下の人たちを「相対的な貧困層」と考え、全体におけるこの割合を「相対的貧困率」と言います。したがって、裕福な国の中央値の半分以下と、貧しい国の中央値の半分以下とでは状況は全く違いますから、同列にして議論するのはばかげたことなのです。
貧しい国の「相対的貧困層」の人たちと比較したら、それは日本の「相対的貧困層」の方が裕福です。また、「絶対的貧困層」の人たちと一緒くたにして今回の女子高生を「裕福じゃないか」と批判するのは、間違いです。日本においては、彼女達は「相対的貧困」に入るということです。ここを国会議員ですらわかっていないことに危機感を覚えます。日本人の言葉の定義を大切にする意識と算数力が劣化した証明ですよ。
問題の本質は、日本で「相対的貧困率」の割合が上昇してきていることなのです。『論理的に考え、書く力』(光文社新書)で相対的貧困率について、具体的な数値を挙げて説明していますが、1985年の「一人当たりの可処分所得」の中央値は216万円でその半分の108万円以下の層、いわゆる「相対的貧困率」は12%でした。これが上昇していて、1985年を基準とする物価変動率を加味すると、2009年は中央値が224万円で半分は112万円ですが、実質で相対的貧困率は16%に上がったと厚生省が発表しています。
「子供の貧困」に絞り、年齢が17才以下の子供に限定して「一人当たりの可処分所得」を並べても、大人の場合の数値とそう変わりません。「子供の相対的貧困率」は、1994年は12.1%、2009年には15.7%、それが今は16%ほどまでに上昇しています。このように、数字ひとつ挙げず、メディアも一般の意見もみんながみんな、世界の本当に貧しい国の中央値とごちゃ混ぜにした議論を展開しているから収束しないのです。数字を挙げればそれで終わりです。ですから日本国民にしっかり算数を学ぶこと、そして言葉の定義を大切にすることを訴えたいのです。