社会学者・橋爪大三郎氏は、かねてより「秘密結社」と言われるフリーメイソンに関心を抱いてきた。氏いわく「日本の占領政策にも深く絡んでいるから」。フリーメイソンは、どこかのプロテスタント教会のメンバーが参加するのが原則で、プロテスタントなら、宗派は問わない。橋爪氏が日本での普及について語る。
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フリーメイソンは日本では、なかなか広まりません。なぜか。キリスト教(プロテスタント)の人口が少なく、敵であるカトリックの脅威もない。これでは組織を拡大しようがない。
そもそも秘密結社の考え方は、日本人と合いません。日本には薩長閥、学閥、軍閥、閨閥などがある。企業や政府機関などに伏在する内部グループで、メンバーは公開。任意加入もできない。秘密結社とは別種の非公式集団です。
天皇制とも折り合いがよくない。神の子孫ゆえに統治者であるという天皇制・国家神道は、フリーメイソンにすれば、英国国教会やカトリックに見える。
ではフリーメイソンは日本に影響を及ぼさなかったかと言えば、まったくその逆。天皇の権威が崩壊したのを機会に一気に流入した。そう、敗戦です。
日本の占領は、フリーメイソンに活躍の場を与えた。トルーマンがグランドロッジ・マスター(フリーメイソンのロッジ=拠点を束ねる総本部の代表者)のまま大統領に就任し、マッカーサーもフリーメイソンでした。
そのネットワークで部下を集めGHQの要所に配した。彼らが中心になって日本の占領政策を立案した。