2010年に、ニトリは京都の南禅寺界隈別荘群のひとつ、「對龍山荘」を購入しました。南禅寺界隈別荘群というのは、明治の元勲・山形有朋が別荘を建てたのを機に旧財閥や野村證券(碧雲荘)、松下電器(真々庵)などのオーナーが別荘を建て、15軒ほどの別荘が集まり、知る人ぞ知るの世界となっております。
時は流れて、オーナーも代わり、別荘を維持するのが難しくなった企業も現れました。実はニトリも、維持に困り果てた前の企業から、打診されての買収でした。最近の南禅寺界隈の別荘は、外国企業や宗教法人が買収して方向性が見えなくなりつつあります。そんな矢先、日本を代表する企業がホワイトナイトを買って出たという見方が、正しいかも知れません。
じゃ具体的に南禅寺界隈別荘群は、いくらぐらいするのか? 以前5000坪ほどの敷地の別荘がオークションにかけられたときは、売り出し価格が80億円でした。実際の売買価格なら100億円はいってるでしょう。對龍山荘は1800坪ながら、作庭家・七代目小川治兵衛の傑作と言われてますから、数十億円は下らないでしょう。
これをプロ野球球団の買収と比べてみるとどうでしょうか。DeNAの買収のときは、100億円弱と言われてますが、ほかに年間の球場使用料やら、球団維持費、選手・スタッフの給料などがばかになりません。観客動員でペイできるかは手腕次第ですし、そもそも、毎年ペナントレースを戦うわけで、弱かったらボロクソの世界。宣伝になるのか、逆宣伝になるのか、未知数です。
一方、南禅寺界隈の別荘は、買えば後は年間2億~3億円の維持費のみ。文化財になっている建物も多く、所有者は管理・維持に努めねばなりません。ニトリの場合は、会社の保養施設として、ホームページに載せてますから、社員は一定の手続きをとれば、見学できるというもの。実に羨ましいですな。
企業としては、京都文化のパトロンになり、野村や松下と並ぶことができたわけですから、格はかなり上がったと思えます。まさに“お、ねだん以上”の買い物をしたのじゃないでしょうか。