私たちは「もうダメ」「病気かも」などと、つい不安ばかりを口にするが、それではたちまち病人になってしまう。そうではなくて、たとえ病気になっても常に前向きでいることが重要なのだ。だからなのか、吉沢さんは、とても98才とは思えないほど若々しく、おきれいだ。吉沢さんに限らず、昔の腰の曲がったおじいちゃん、おばあちゃん像とはまるで違う。
実際、日本老年学会の調査によれば、現在の高齢者は「昭和の高齢者に比べて5~10才若返っている」ことが想定されるという。1992年の高齢者と2002年の高齢者を比較すると、歩行速度が11才若返った。知能検査のデータでも、最近の70代の平均得点は10年前の60代に相当するというから、「若返り」のペースは驚くほど急速だ。
医学博士で白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二さんはその理由についてこう話す。
「食生活など生活習慣が改善されたり、血圧がコントロールされるようになったことで病気の罹患率が低くなり、健康状態がよくなった。医療の発達だけでなく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が向上したことが大きいと思います」
内海さんは87才のときの骨折中の際も仕事を続け、今も浅草の東洋館で毎月8回は舞台に立つ。まさに“生涯現役”のお手本のような存在だ。
「私が健康のためにやっているのは『腰歩き』。道路にまっすぐ引かれた白線を、またぐような感じで歩くんですよ。腰を左右に突き出しながら。そうすると、寝ている間に固まった筋肉がほぐれて歩きやすくなる。足だけで歩こうとせず、腰で歩くのがコツです」(内海さん)
今は自宅から浅草まではタクシーを利用するが、
「歩けば20分くらいで、歩こうと思えば今でもいくらでも歩けます。だけど歩いているとケチに思われるだろうから、私はタクシーに乗るのよ」
と言って内海さんは笑った。
※女性セブン2016年10月20日号