国内

将棋界激震のカンニング疑惑 囲碁界は大丈夫か

囲碁名人戦七番勝負の様子

 10月12日、将棋界に激震が走った──。日本将棋連盟が、三浦弘行九段(42)を年内の公式戦出場停止処分にしたと発表したからだ。ことの発端は、三浦九段が対局中に不自然な中座を繰り返すことから、スマートフォンの将棋ソフトを使って、いわゆるカンニングをした疑いを持たれたことによる。

 この事件は、将棋界だけでなく、一般のニュース番組でも詳しく採り上げられるなど世間の関心を集めたが、「お隣の世界」である囲碁界は大丈夫なのか。朝日新聞紙上で囲碁名人戦の観戦記を20年にわたって執筆している観戦記者の内藤由起子氏が解説する。

 * * *
 10月11日に将棋連盟が聞き取り調査を行った中で、三浦九段は「疑念を持たれた状況では対局できない」として、挑戦者に決まっていた第29期竜王戦七番勝負に出場しないことを申し出たという。しかし休場届の提出が期限までになかったことから、連盟は、出場停止処分を決めた。

 10月15日に始まった七番勝負には、挑戦者決定戦で三浦九段に敗れた丸山忠久九段が繰り上がって出場。挑戦手合出場者が交代するというのは、異例中の異例だ。

 三浦九段はカンニング疑惑に対して、「離席して別の部屋で体を休めていた。やましいことは何もしていない。今後の対応は弁護士と相談する」と否定している。本当に三浦九段がカンニングしたのかどうか、確たる証拠は出ていない。

【囲碁界の反応】

 囲碁の元名人である武宮正樹九段は「将棋連盟は冷たい対応だねえ」と三浦九段に同情していたが、高尾紳路九段は「仲間の棋士が『黒』と言い切っている。それを信じる」と、三浦九段に懐疑的だった。

 また、依田紀基九段は自身のブログで「三浦九段の対応が僕にはどうも腑に落ちない。(中略)もし僕が棋聖戦の挑戦者に決まって、身に覚えのないことで疑いを掛けられて、七番勝負の出場を停止させると言われたら、(中略)徹底抗戦します。身に覚えがないなら、持っているスマホなどすべて警察に提出して解析させたらいいじゃないか? と思う。なんでこんなにあっさり引き下がれる?」と疑問を呈していた。

【囲碁界も、人ごとではない】

 ふだん、囲碁の総本山である日本棋院で打たれているプロの対局は、昼食、夕食ともに休憩時間がある。これは将棋界も同じだと思う。

 休憩時間は盤の前に座っていることが許されておらず、離席せねばならない。食事は、出前は現在できないので、弁当を持参する以外は外に出て食べるほかない。食事を終えても休み時間中は、自分の対局室に入れないので、棋士は他の対局室に入って碁を見て、対局再開を待つケースがほとんどだ。

 スマホなどの電子機器については、鳴らないように電源を切るなどの注意はあるが、持ち込みについての規定はない。

 対局中は、どこにいてもかまわないのだが(自分の手番で離席すると、その分、持ち時間が減るだけ)、手洗い以外は行く場所がない。棋士が検討している記者室や棋士控え室には入ると気まずいので、ほとんどの棋士が入ってこない。

 結局、手洗い、自販機で飲み物購入のほかは、盤の前に座っているしかなく、観戦記者として私が見ている対局者は、ほとんど対局室の中にいる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン