渡辺直美演じる妻が語ったように、医療保険の使途は治療費だ。しかし入ってさえいれば、実際にかかった治療費以上のお金が下りることもあって、それを後々の闘病生活においてこれまで述べてきたように、再建やウイッグ、マッサージなどの費用に充てることもできる。
そこで大事なのは、「保険と貯蓄の両輪で備えること」だ。
「がん保険も含めて生命保険、医療保険など保険料合計の目安は、世帯収入の5%前後といわれています。そして、収入の1~2割は貯蓄に回す。がんや病気が心配のあまり過剰なほど手厚い保障の保険に加入し、貯蓄はほとんどないという人もいますが、保険と貯蓄のメリットを生かして、両方ともバランスよく備えることが重要です」
たとえば、備えるお金が2万円あるなら、1万円は保険、1万円は貯蓄するなど、“いざというときに確実に使えるお金”をしっかり準備しておくこと。逆に“余裕がないから保険に入らない”というのももちろん間違い。貯蓄も保険もないのでは、いざというときに困ってしまう。
「余裕のない人こそ、少しの保険料で大きな保障が得られる保険で備えるべき。家計に余裕がなく、まだ若いから大丈夫だと思って、がん保険を解約した直後にがんと診断されお金がつきて病院に行けなくなってしまった人もいる。その人は家族には『病院に行く』と言って家を出て、それでもお金がなくて病院に行けないから行くあてもなく公園で過ごしていた。
亡くなったと聞いた時には、あまりのことに声も出ませんでした。誰か相談できる人がいたら、少額でも保険を継続していたら、別の選択肢があったのではないでしょうか」(黒田さん)
前出・坂本さんが言う。
「同じ時期に治療を受けた人から、『保険に入っていなかったから、子供の進学費として貯めていたお金を使っている』と聞いて、私も子供がいるから他人事とは思えませんでした…。彼女は、『子供や夫は、ママがいなくなるのは絶対嫌だからって言うけれど、入っておけば…とか、私のせいで…とか、どうしても思ってしまう』とも話していて、何とも言えず胸が苦しかったです」
※女性セブン2016年11月3日号