7月の疑惑の一局後もトーナメントを勝ち進んだ三浦九段は、竜王戦の挑戦権を獲得。しかし、10月15日の開幕目前に処分を下され、挑戦者は差し換えられた。
三浦九段は10月18日、弁護士を通じて一連の疑惑は〈全くの濡れ衣〉とする反論文を発表。同じ日に『NHKニュース7』の独占インタビューに応じ、
「対局中に絶対にソフトを使っていませんし、そもそもスマートフォンに分析ができる将棋ソフトが入っていません」
と、疑問を完全否定した。
一方、2日後の20日には、10月3日の対局で三浦九段に敗れた渡辺明竜王(32)がカンニング疑惑について「間違いなく“クロ”」と断定する実名告発を掲載した『週刊文春』が発売された。
こうした批判の応酬となるのは、ソフトと三浦九段の指し手の一致率といった状況証拠はあるものの、物証はゼロだからだ。そうした状況でなぜ、連盟は出場停止処分に踏み切ったのか。前出・松本氏がいう。
「竜王戦七番勝負の開幕直前に疑惑が浮上したことで、連盟は厳しい選択を迫られた。開幕後に疑惑が表沙汰になれば、竜王戦が中止に追い込まれかねない。そうなると、主催者であり、3億円以上もの多額の契約金(そのうち優勝者賞金は4320万円)を拠出する読売新聞社に対しても言い訳できない状況になる」
それを避けるために、急な処分となったとみられているが、連盟はこう説明する。
「三浦九段が疑念を持たれた状況では対局できないので(竜王戦を)休場したいと申し出てきた。それで休場届を出すように伝えたが提出されなかったため、出場停止処分とした」(広報課)
※週刊ポスト2016年11月4日号