総務省の家計調査(2015年)からもそれがわかる。夫65歳以上、妻60歳以上の年金生活世帯(無職世帯)の家計は生活費が月約27万5000円かかり、年金などの収入では足りずに毎月約6万円を貯蓄から取り崩している。ただでさえ消費税増税前(2012年)に較べて支出は税金・保険料(3万2000円)や食費(6万2000円)、携帯電話などの交通・通信費(2万7000円)が増えており、その分、交際費や家事用品などの支出を抑えている。
そこに加えて年間14万円も収入が減少すれば、新たに保健医療費分(月額1万5000円)に相当する金額を捻出しなければならない。
比較的資産を持つ現在の高齢者世代の消費が落ち込むと、デフレは解消せず、賃金も下がる。その結果、年金額の引き下げに拍車がかかるという悪循環が生まれる。
「現在40~50代の次の世代はもっと悲惨です。年金生活を迎えても受給額は年々減っていく上に、資産も少ない。生活は危機的状況になると覚悟していく必要があります」(前出・荻原氏)
前出・井坂氏は、国は総額10兆円の年金カットを目論んでいると指摘する。
「年金カットの総額は10年で約4.2兆円ですが、これに特例水準の見直し(※注)など他の年金削減を加えると国は10兆円ほど年金支払いを減らせるという計算になる」
【※注/1999~2001年の3年間、物価が下がったにもかかわらず、政府は景気対策として年金額を引き下げずに据え置いた。これが本来より高い特例水準であるとして、2013年から段階的に年金額を引き下げた】
※週刊ポスト2016年11月4日号