かつては森昌彦(現・祇晶)や手前味噌ながら私、古田(敦也)や谷繁(元信)など、時代ごとに名キャッチャーと呼ばれる選手がいたものだが、最近は見当たらない。なぜ、名キャッチャーはいなくなってしまったのだろうか。
そもそも最近は、キャッチャーになりたいという子供が少ない。だからキャッチャーが育たない。私の幼少時代、1番人気は今と同じくピッチャーだったが、2番は実はキャッチャーだった。プロテクターをつけるのが格好良かったからだ。しかし今の子供たちに訊くと、「立ったり座ったりがしんどいから」イヤだという。子供の頃から楽することを考えているのだから、なんとも悲しい話だ(苦笑)。
そして、キャッチャーとは何かを教えられる指導者がいないことも大きい。
キャッチャーは専門職であり、経験者でないと教えられない。私はヤクルト時代、1年間フルに古田をベンチで私の横に座らせて勉強させた。彼は元々キャッチングとスローイングが良く、頭脳明晰だったから1年でモノになったが、例外だ。本来は、経験者がつきっきりで教えても何年もかかる。
にもかかわらず、最近はキャッチャー経験者の監督が少ない。特にセ・リーグは外野出身の監督ばかりだ。
私には「外野出身者に名監督なし」という持論がある。外野は試合中に考えるのは守備位置くらいで、頭を使わない。現役時代、そんな過ごし方をした監督に複雑なサインプレーはもちろん、キャッチャーが好リードをしているかどうかなどわかるはずない。抑えればいいリード、打たれれば悪いリードとすべて結果論で判断する。そもそもキャッチャーの重要性を理解していないのだ。