トイレの中は自分だけの空間。修行者が行を行うように、誰にも見えないところで自分に向き合い、自分の内面を見つめてほしい…という思いからトイレ用の日めくりが誕生した。
トイレ用ではないものの、ベストセラーとなった松岡修造の『日めくり まいにち、修造!』は、松岡自身、以前からみつをの「日めくり」のファンだったこともあり、繰り返し繰り返し言葉が味わえる「日めくり」という形をとったという。
原稿用紙に自分の詩を書き、その詩の中でもっとも伝えたい思いを凝縮した後、ようやくみつをは筆を執り、認めた。
初の書籍『にんげんだもの』で世間に名を知られるようになったものの、書家が自分で作った詩を書くことはとても珍しく、また独自の書体で書かれていたこともあって、「書を習ったことのない人間が思いつきで書いているのではないか」と誤解をされることが多かった。
だが実際は、19才で書家・岩澤渓石に師事し、30代で毎日書道展に連続入選するなど、将来を嘱望された若手書道家。その頃の作品はすべて基本に忠実な古典的なものだった。
が、その後、特定の流派に所属して制約を受けることに抵抗を感じ、自分の言葉、自分の書を書いていく決心をする。鍛錬によるベースがあるからこそ、他の人には絶対に真似できない独特の書が生まれ、詩とのコラボレーションで唯一無二の世界観が生まれたのだ。
※女性セブン2016年11月10日号