◆「全く知りません」
その後、A氏らは鳩山氏と面会し、「出資金を返してもらえないか」とかけ合ったとも明かす。
「鳩山さんは“皆さんに迷惑をかけて申し訳ない”と謝罪の言葉を口にしてくれましたが、投資のことは全く知らないような言い方で、I氏に返金を促すこともしてもらえそうにない。そこでI氏を訴えることにしたのです」(A氏)
そうして今夏以降、I氏への告訴に向け、A氏やC氏が中心となって大手弁護士事務所と協議を重ねている。被害を訴える出資者たちは他にもいるといい、担当弁護士は、「現在、詐欺での集団刑事告訴に向けて準備を進めているのは事実です」と認めた。
鳩山氏に取材を申し込むと、弁護士を通じてこう回答した。
──I氏との関係は?
「I氏は知人の紹介で知り合いました」
──H社への出資トラブルについては?
「H社は商品の販売促進業務を行なう会社として設立しました。他の皆様から別途出資金を募集すること等、全く想定しておりません」
──I氏が鳩山氏の名前を使い出資等を募っていたことは知っていたか?
「全く知りません。また鳩山に対し、どなたからも投資をなされる前のお問い合わせはありませんでした」
──H社に1000万円を出資し、取締役に就任した経緯は?
「特にコメントすることはありません」
続いてI氏の見解だが、奇妙なことに本誌が取材を申し入れる前の段階でH社の代理人弁護士から〈詐欺被害者が続出しているとの虚偽事実が流布されています〉と記された書面がファックスで送られてきた。
そこでH社代理人を通じ、I氏に金銭トラブルを訴える被害者の声について質問したところ、「架空の投資・出資話で金銭を詐取した事実はありません」と説明し、集めたカネの使途については「詐取した事実はありません」、鳩山氏との関係については「お答えする必要はないと考えております」との回答だった。出資トラブルに詳しい紀藤正樹弁護士は言う。
「一般に出資や投資をめぐるトラブルを詐欺として刑事告訴し、実際に詐欺事件として立件までいくケースは多くありません。民事での賠償請求であれば過失でも被害額が弁償されるケースは多いですが、刑事の場合だと故意であることを立証しなければならないからです」
政治家時代から数々の金銭にまつわる話題や問題を提供してきた鳩山氏だが、その“宇宙人的金銭感覚”ではこのようなトラブルは「些細なこと」に思えるのだろうか。
※週刊ポスト2016年11月11日号