これまで日本の「三大夜景都市」といえば神戸、長崎、函館だったが、夜景観光コンベンション・ビューローなどが主催する2015年の「夜景サミット」で、函館ではなく札幌が「新三大夜景都市」に選ばれたのだ。
「函館山からの夜景は独特の地形と海とのコントラストがキレイ。でも、札幌の藻岩山から見る夜景は、光量が多いため函館より輝いて見えます」(旅行会社スタッフ)
いったん逆襲に転じると、物量にモノをいわせる札幌側の攻勢は手厳しい。
「札幌にはススキノがあるけど、函館の繁華街ってどこ?」(札幌市民・男性52歳)
「函館は人口も面積も旭川より下だし相手にならない」(札幌市民・女性53歳)
さらにはこんな声も。
「函館の人は『くじら汁(※)がないと正月を迎えた気がしない』というが、札幌では聞いたことがない。東北文化が色濃いんでしょう。方言も津軽弁に近いと思う」(札幌市民・男性60歳)
【※味噌などで味付けされたくじらの塩漬けが入った汁。主に東北地方で食べられている】
その地域性からか、函館にはユニークな食文化が根付いている。
ローカルコンビニストア『ハセガワストア』の人気メニュー『やきとり弁当』は、鶏肉ではなく豚肉がご飯の上に乗る。道南地区で焼き鳥といえば豚肉なんだとか。ハンバーガーチェーン『ラッキーピエロ』のメニューも鶏のから揚げを挟んだ『チャイニーズチキンバーガー』や『くじら味噌かつばーがー』など独特だ。
民俗学者で札幌国際大学教授の大月隆寛氏が言う。
「北海道でほぼ唯一、人口が増え続けているのが札幌圏で、とくに若い女性の流入人口が多いのが特徴です。一方、若い人たちによると、函館は『ヤンキー密度が高い』街。漁業関連で栄えてきた港町という風土的な背景もあるので、よくも悪くも、札幌に比べて荒っぽい印象がありますね」
北海道新幹線が札幌まで延伸すれば、「2つの都市の“距離”が一気に縮まる」と大月氏は言うが、この溝は埋まるのか。
※週刊ポスト2016年11月11日号