サイトを立ち上げた経緯について、堀下剛司代表が語る。
「開設は2012年11月。東日本大震災での人々の行動に感銘を受けたことが、大きな動機でした。非常時でも互いに支え合い、我先にと争わずに並んで順番を待つ日本人の美徳や精神性の根底のひとつに、仏教の教えがあるのではないかと思ったんです。
仏教で説かれる『慈悲の心』『感謝の心』などは現代社会にも通じる智慧であり、医師やカウンセラーではフォローしきれない。僧侶こそ、日本人の求める答えを持っていると考えたんです」
悩める人の心情に寄り添うお坊さんの味わい深いアドバイスが評判を呼び、相談者は増えていった。相談者からは「心が軽くなりました」「涙が止まりません」とお礼も多いという。サイト内では僧侶のプロフィールや回答歴なども閲覧できるほか、ユニークな回答にはフェイスブックの「いいね!」ならぬ「有り難し」が集まっていくのだとか。
相愛大学教授で僧侶の釈徹宗氏は、「hasunoha」が支持される理由をこう分析する。
「お坊さんという存在は『仏道』という一般社会とは別の価値体系の中を歩んでいます。一般社会では“ダメ人間”“モラルハザード”とひとくくりにされてしまいかねない悩みでも、仏教ではそれとは違う価値観を提示してくれるのではないか、そんな“救い”への期待があるのだと思います。そのニーズが、ネット社会の利便性とマッチした好例でしょう」
仏の教えが、ネットを介して人を救う時代が来たようだ。
※週刊ポスト2016年11月11日号