「撮影ではぼくが作っているんだけど、おいしくできるのは隣で奈美さんが“そこで火を強めてください”などアドバイスをしてくださるからこそ。でも撮影中はテンションが高くなってるもんだから“ひとりでも作れるだろう”と自宅で卵焼きを作ってみたことがあるんですよ」
その出来映えは?
「まずいわけじゃないんだけど、やっぱり何かが違うんですよね。作ってる最中も“卵が膨らんできたら箸でつぶして…”と考えながらやってると、つぶしている間に焦げちゃったりして(笑い)。役と実生活はやっぱり違いますよね」
競走馬の馬主でもあり、競馬好きとして知られる小林。しかし実生活で趣味と呼べるものは、ほとんどないのだという。
「役者は、趣味なんて持たなくてもいいと思ってるんです。趣味と実益を兼ねたのが芝居だから。撮影現場に行くと、おもしろいことがいっぱいある。『深夜食堂』だったら、“ああ、奈美さんは今日もおいしい料理を用意しているな。美術スタッフも頑張ってるな”と思いながらそこにいることが、おもしろい。共演者が台詞を何度もとちるのも、おもしろい。これ以上おもしろいものを持ったら、贅沢だと思うんです」
70年代、唐十郎(76才)が率いた劇団『状況劇場』の看板役者として活躍し、数々の映画、ドラマで存在感のある演技を私たちに見せ続けてくれている小林は、根っからの役者なのだ。
「この先のことは何も考えてないですね。ダメになったらそのときのことだし、自分で“もう役者はいいや”と思っていても、オファーが来るかもしれない。現場に行くのがしんどいって思うようになるまではやってていいんじゃないかな」
※女性セブン2016年11月17日号