中国は2005年に北朝鮮の羅津港を租借しました。また、アイスランドの土地も買い漁っています。これらはロシアにとって権益上極めて重要な「北極海航路」に対する、中国の野心の表れです。
中ロは、2014年に「30年間、総額40兆円」に及ぶ天然ガス供給で合意したと伝えられました。しかし、実現に向かっているとの話は聞きません。中国が価格をめぐってロシアの足元を見ていることが原因と考えられます。中ロ関係もまた、お互いの国益のために鎬を削る関係なのです。
しかし、だからといって日ロ平和条約によって日本が中ロ関係に楔を打ち込めると考えるのは、あまりにも早計です。ロシアにとって中国は最大の貿易相手国です。ロシアが日本と友好関係を結んだとしても、中国をあからさまに敵に回すようなことはあり得ません。
この認識のもと、日ロ双方の国益が合致するところを増やし、関係を積み上げていくことです。幸いロシア国民は日本が好きなので、国民感情の面では良好な関係を築きやすいはずです。
ただし、忘れてならないのがアメリカです。今年2月、オバマ大統領は安倍首相との電話協議で日ロ関係の進展に懸念を示しました。他国の外交交渉に口を出す明白な内政干渉ですが、それほどまでにアメリカは日ロ接近に不快感を抱いているということです。このことを日本は過小評価してはならないと思います。
残念ながら今の日本は、一国では領土も国民の安全も守れない脆弱な国です。日ロ交渉もまた、アメリカへの丁寧な説明と説得を徹底し、理解と支持を得なければ、日本にとって深刻な状況が生まれかねません。日米関係が揺らいだときの日本の安全保障は本当に危うい状況であることを、いまの日本人は決して忘れてはならないでしょう。
※SAPIO2016年12月号