ビジネス

大阪と愛知で前代未聞の激しい「かに・かに合戦」が勃発

前代未聞の「かに・かに合戦」が勃発

 大阪、愛知間で前代未聞の“かに・かに合戦”が勃発していた──。“先制攻撃”を繰り出したのは、大阪・道頓堀にあるかに料理専門店「かに道楽」。巨大なかにの看板でお馴染みだ。愛知県豊橋市の練り物会社「ヤマサちくわ」が製造販売する「かに道楽」という名称のかまぼこ(以下、「かまぼこ・かに道楽」)によって、商標権や営業上の利益が侵害されたとして、名称使用の差し止めや損害賠償などを求めて大阪地裁に訴えたのだ。

「かまぼこ・かに道楽」は愛知・岐阜・三重・静岡の東海4県で売られている冬期限定の商品で、販売価格は一個600円(税抜き)。在阪の大手紙記者がいう。

「当初、『かに道楽』は書面で名称使用の中止を求めていたが、『ヤマサちくわ』が“ウチが最初に使っていた”と反論して交渉が決裂。それで『かに道楽』は今年8月、提訴に踏み切った」

 9月26日に開かれた第1回口頭弁論で「かに道楽」は過去3年分の損害賠償を請求した。「かまぼこ・かに道楽」の3年間の売上高を900万円と推計し、うち5%にあたる45万円の支払いを求めた。これに対し、創業190年を誇る老舗の「ヤマサちくわ」が反撃に出た。

「『かまぼこ・かに道楽』は1970年2月に販売を開始しており、『かに道楽』が商標登録を出願した1972年より2年早かったと『ヤマサちくわ』は裁判で主張したんです。商法に定める『先使用権』(*)があるとして真っ向から反論した」(同前)

【*他者が特許出願した時点で、すでにその特許に関する事業や準備をしていた者に認められる権利。先使用権者は他者の特許権を無償で実施し、事業を継続することができる】

 それを証明する“切り札”として「ヤマサちくわ」が裁判で提出したのが、当時の「社内報」だ。

 そこには、〈本場北海のタラバガニで新製品「カニ道楽」販売〉という記事が掲載され、〈かねがね製造部において鋭意製作中であった「カニ」入り新製品が、ついに2月15日より発売のはこびとなった。この製品は魚肉とタラバガニ、そして玉子の3つの原料を加工したもので、見た目にもゴージャス〉(原文ママ)などと書かれていたのだ。

 今後の裁判はどうなるか。

「和解の可能性もあると思います。それが難しくなれば『かに道楽』側は商標権侵害を認めさせるために、単に名前を使われたというだけでなく、“指定商品との類似性”を立証する必要が出てくる。先使用権も争点になるでしょう」(商標法に詳しい齋藤理央弁護士)

 両社に取材すると、ともに「係争中のためお答えできません」と回答した。かにの美味しくなる季節に思わぬ“共食い”である。

※週刊ポスト2016年12月2日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン