武田は全日本1区で東洋大の服部弾馬(4年)と競り合っての区間2位。伊勢神宮から表彰式会場に向かう道すがら「ニューヨークを狙います(ニヤリ)」と宣言していた。上尾ハーフの上位2人は毎年、翌年3月のニューヨークシティハーフに招待されるのだ。よほど好調なのだろう、見事な有言実行である。
同じく先頭集団にいた早稲田大エース・平和真は6位、声援に拳を突き上げている間に先頭のスパートから遅れた“神ってる”鈴木洋平は7位に入った。4年トリオの充実は著しい。
また、今年の上尾ハーフはルーキーも豊作だった。東海大1年の鬼塚翔太が3位に入り、1時間2分3秒はジュニア歴代2位の記録。東海大のレジェンド・伊達秀晃(2005~2007年に3年連続区間賞)の学内記録も破り、東海大ファンはSNS上でお祭り騒ぎに。同じく東海大の松尾淳之介(1年)は8位。出雲も全日本もエントリー外の松尾だが、一気に本番出走が見えてきた。
選手の走力データが出揃い、各大学は区間エントリー構想をはじめる。カギは「4区」と見ている。今回の箱根は5区が23.2kmから20.8kmへと短くなる一方、4区が18.5kmから20.9kmと長くなる。
過去のデータを見ると、5区が最長区間となった2006年より前の「旧4、5区」時代に総合優勝した大学は、4区にキーマンを配していた。「4区でトップを走る大学がそのまま勝つ」ことが多かったのだ。
そして、旧4区の歴代1位の記録保持者は駒澤大の藤田敦史(1999年・現コーチ)。旧4区を重視して勝つ展開のノウハウは駒澤大、そして早稲田大や山学大などに蓄積されている。一方、2年前が初優勝の青学大には旧4、5区で勝った経験がない。この差がどう出るか。各校の構想を勝手に想像して楽しむのもまた味わい深い。
※週刊ポスト2016年12月9日号