パ・リーグを中心に投手として活躍し、引退後も評論家として活躍するあるOBはこう振り返る。
「とにかく粘れば上がる余地があると信じていた。“勝ち星は確かに8しかないが、先発して6回まで投げ、降板した時点では勝っていたケースが6試合あった”といった具合にアピールしていました。球団だって最初からマックスの額では提示しないでしょう」
ベテラン選手では「妻が“1回目はサインするな”といっていて、ハンコを持たせてくれなかった」などの言い訳で交渉を引き延ばし、譲歩を引き出そうとする者もいるという。
互いが知恵を絞り合ってぶつかるわけだが、前出・野崎氏は交渉の場では「禁句」もあると明かした。
「“トレードに出してくれ”くらいは許容されますが、言ってはいけないのは、“他の選手のせいで自分の成績が伸びなかった”というような一言です。ある年、右のエース級投手が“ジャイアンツにいたらもっと勝てた”と自分の成績を弁護しましたが、これは阪神の野手の反感を買いましたね」
そうした失言を避けるためというわけではないだろうが、代理人を立てる選手も少なくない。前出・広澤氏はこんな言い方をする。
「とにかく契約更改でつらいのは、自分のことを自分で褒めないといけないところ。僕はそれがとにかくしんどかった。そういう風に思う選手が少なくないから、代理人を立てることが増えているんじゃないか」
※週刊ポスト2016年12月9日号