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2016.12.02 07:00  介護 ポストセブン

認知症介護、家族がたどる「4つの心理的ステップ」って?

写真/アフロ

 認知症の母を、遠距離(東京―盛岡)で介護を続け、その様子をブログで発信し、話題となっているクドヒロさんこと工藤広伸さんが、息子の視点で“気づいた””学んだ”数々の「介護心得」を紹介するシリーズ、今回は、工藤さんが「ぜひとも知ってほしい」とより強い思いをこめたアドバイス。

 認知症の介護をする家族の心境が、どのように変化していくか、段階(ステップ)ごとの解説です。認知症介護の人も、これからするかもしれない人も、必見!

 * * *

 4年間の認知症介護生活の中で、介護をラクにしてくれた一番のコトバは何ですか?と質問されたら、間違いなく今日ご紹介する「4つの心理的ステップ」と答えます。

 家族が認知症と診断されたとき、介護する側は、急に霧に覆われたような感覚になります。進む方向も目印もない、何をしていいか分からないという大きな不安のためです。しかし、この「4つの心理的ステップ」を知ることで、霧が晴れ、遠くまで伸びるまっすぐな1本の道が見えるようになるはずです。

 それぞれのステップ、どう攻略すれば、認知症介護がラクになるかについて解説します。

◆「4つの心理的ステップ」とは?

 このステップは、川崎幸クリニック院長・杉山孝博先生が考案されたものです。『公益社団法人認知症の人と家族の会』の副代表理事でもある先生は、認知症介護で苦労する家族の気持ちをよく理解されています。

◆第1ステップ 「とまどい」「否定」

 几帳面でしっかりしていた人が、突然変なことを言い出す、簡単なことが出来なくなる姿をみて、介護する側は「とまどい」ます。一瞬、認知症かも…と思うのですが、先月まで普通だった人が、急に認知症になるわけがないと「否定」します。このステップでは、認知症だということを家族が認めないので、誰にも相談できない状態になり、強い孤独を感じます。

◆第2ステップ 「混乱」「怒り」「拒絶」

 とまどい・否定をしたところで、認知症の症状は一向に改善されません。相変わらず、同じことを何度も言うし、勝手な行動を取ります。次第に家族は「混乱」し、どう対応していいか分からなくなります。昔と変わらず、自分の常識で認知症の方と接するのですが、全く理解してもらえないので、次第に「怒り」へと変わります。

「なんで分かってくれないの! さっきも言ったでしょ!」

 そんなイライラした日々を過ごすうちに、精神・肉体ともに疲れ果てた家族は、介護を「拒絶」します。

 あの人さえいなくなってくれれば、介護は終わる…そんな気持ちにすらなります。ここで適切な医療や介護サービスを受けずに、混乱・怒り・拒絶を続けると、認知症の症状はさらに悪化すると、杉山先生は言っています。

◆第3ステップ 「割り切り」または「あきらめ」

 人間がすごいと思うのは、第2ステップのようなつらく苦しい状況に追い込まれても、何か気づきを得ていることです。それは、認知症という病気だから、自分の常識に当てはめてもしょうがないという「割り切り」や、何回言っても改善されないのだから、注意するのは止めようという「あきらめ」の境地に達するのです。

◆第4ステップ 「受容」

 認知症の人のすべてを受け入れられる状態になることを、「受容」と言います。介護者が人間的な成長を遂げた結果、悟りの境地のようなところにたどりつきます。この頃になると、どんな言動でも許せてしまいますし、介護者の心は波のない水面のように穏やかです。

◆なかなか第3ステップに進めないワケ

 介護者の中には、何年経っても、第1ステップと第2ステップのままの人もいます。認知症を認められず怒り、混乱する日々は、介護者自身を疲弊させます。

 なぜ第3ステップに進めないかというと、認知症の症状がどういうものなのか、理解しようとしていないからです。どんな不思議な言動も、認知症ご本人にとっては事実であり、忘れてしまうから、何回も繰り返し言うのです。

 第1ステップ、第2ステップから早く抜け出すには、介護者自身が認知症の勉強をすることが大切です。

 わたしは、認知症の本を多く読み、症状を理解して対応方法を研究しました。そして、時間の経過もある程度は必要です。つらくて泣いてしまう、疲れ切ってしまう経験を重ねることで、そこから抜け出したいという強い思いが生まれ、認知症を学ぶ原動力となることもあります。

 認知症を深く知ることで、第3ステップが見えてきます。自分が第3ステップにいるなと感じられると、認知症ご本人にもプラスに働くと実感できると思います。

 私の経験では、症状が安定し、進行がゆっくりになる印象です。なぜかというと、次の法則と関係しているからです。

◆もうひとつ、覚えておきたい「作用・反作用の法則」

 その法則とは、「4つの心理ステップ」と同じく杉山先生が提唱する「作用・反作用の法則」です。これも合わせて覚えておいてください。

 簡単に説明すると、“認知症の方は、介護者の鏡”という意味です。介護者がイライラすれば、認知症の人もイライラするのです。第2ステップで怒る家族に当てはめて考えると、家族が怒るから、認知症の人も一緒に怒るというのが理解できます。

 わたしは、このステップに早く出会ったおかげで、第1、第2ステップの時間をかなり短くすることができました。また、意図的に、先のステップへ進む努力をしました。

 もうひとつ、子宮頸がんで余命半年と告げられた90歳の祖母のおかげで、第4ステップにもすぐ到達できました。これから死にゆく人に、怒りをぶつけることは、人としてしないでしょう? すべてを受け入れようと思えたのは、余命半年という時間の制約のおかげでした。

 いかがでしたか? とにかく第1、第2ステップから早く抜け出して、介護者自身を守ることが、介護者にとっても、認知症ご本人にとっても幸せなこととではないでしょうか?
 
 今日もしれっと、しれっと。

◆工藤広伸 (くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。 ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/)

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