◆タイムリミットが「延長」した

 血管内治療は従来の治療と何が違うのか。脳梗塞は、何らかの原因で脳の血管が詰まり、酸素や栄養が不足して脳組織が壊死する病気だ。

 現在の標準的な治療は、原因となる脳の詰まり(血栓)を「t-PA」という治療薬で溶かす方法だが、発症してから4時間半以内でないと投与できない。発症後、患者が意識を失って倒れるケースが多い脳梗塞では、4時間半以内に治療に至るのはハードルが高い。

 しかも脳梗塞は、たとえ死を免れても後遺症が残るケースが多い。全身麻痺や半身不随になったり、激痛を伴う末梢性疼痛が生じるなど、発症後すみやかに治療を開始しないと、患者のQOLが急激に低下する例が多いのだ。

 そこで登場したのが血管内治療だ。t-PA薬が血栓を「溶かす」方法であるのに対し、この新治療法では血栓を「除去」する。

「足の付け根の大動脈から細いカテーテルを体内に入れて脳内の血管に伸ばす。その後、吸引したり、金属のメッシュで引っ掛けたりして、血管の詰まりを取る治療です」(前出・植田氏)

 いまの脳梗塞治療ではt-PA治療薬の投与が基本となっている。だが、血栓の大きい重症患者などには効果が見られない場合がある。そのために、登場したのが血管内治療だ。心臓の治療としてはすでにポピュラーなものとなっていたが、脳の治療としても2010年から段階的に保険適用が認められ、いま広がりつつある状況である。

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