昨年の四天王で唯一残った一色恭志(4年)は自己ベスト更新とはならなかったが、むしろ青学大が走力を増すのはここからだ。
「青学の富津合宿はエゲツないですよ」
八王子の会場でそう証言したのは2011年に国学院大で10区を走った寺田夏生(JR東日本)だ。大手町のゴール目前で直進するはずの交差点を中継車につられ右折した逸話から、私たちが「寺田交差点の寺田」と呼ぶ“伝説の男”だ。寺田の所属するJR東日本も青学と同じ千葉・富津で合宿を組んでいる。
「一色は富津でロード5000mを2本走り、設定14分10秒のところを13分台で帰ってくるんです……」
実業団選手でも舌を巻く厳しい練習を王者・青学は乗り越え、本番に臨むのだ。
富津はこの時期も寒すぎず、信号のない道でロード練ができるので、箱根出場校が数多く合宿を張る。駅伝好きなら別荘を構えたいほど絶好の観察スポットだ。青学大の残りの課題といえば、秋山雄飛(4年)や池田生成(同)らチームに安定感をもたらす最上級生の仕上がりくらい。
一方、八王子LDで1万mの27分台突入を狙った東洋大・服部弾馬(4年)は全日本駅伝の疲れが抜けきれなかったのだろう、29分台に沈んだ。高校時代から一色と同世代トップを競ってきた服部だが、八王子と日吉で明暗は分かれた。「トラックで世界を狙う」ことと箱根の両立の難しさを、改めて実感させられる。
※週刊ポスト2016年12月16日号