もちろん母の言葉に驚きましたが、かといって刃向かう気力もない。私は疲れ切っていて、朝、無言でご飯を食べると、昼まで寝て、本を読んだり、ゲームをしたりして過ごしていました。
そんな私に、「買い物行くけど、何か欲しいものはないの~?」と母は上機嫌でした。ところがある日、どうしても朝起きられず、嘔吐も止まらない。慌てた母に病院に連れて行かれました。
内科医は私だけを呼び出し、なぜか母のことばかり根掘り葉掘り聞き出そうとします。 そして「今度はお母さんとカウンセリングにいらっしゃい」と言うのです。なぜ母がいなくてはいけないのかと不思議で、母に話しませんでした。
その後、同じ病院には行かず、別の病院で「胃炎」と診断されました。自分と母の関係が、医者が一目で見破るほどの問題を抱えているとは思いもしなかったのです。小学生の頃から、食べては吐きはいつものこと。母もそれは知っていましたが、叱られたことはありません。
実は母も子供の頃から同じ癖があって、私と母は「後ろから見たらわからない」と父が言うほど、細身の背格好が似ていました。
◆私を殴っていた手で、母は老いた実父を殴り出した
そんなとき、わが家に母の父、祖父が住むことになりました。祖父の耳が遠いということもあったのでしょうが、毎日、朝から母の怒鳴り声で目が覚めます。そのうち、祖父の悲鳴が私の部屋にも届き、いてもたってもいられない。私を殴っていた手で、母は老いた実父を殴りだしました。
「ひぃ~、ひぃ~」
祖父の泣き声は、この世の生き地獄の声。それは自分が殴られるより、ずっと悲しいものでした。
<次回へ続く>
※女性セブン2016年12月22日号