高価な着物などを保存するものとして人気が高い桐のたんす。熟練職人が作ったものは、引き出しを閉めると別の引き出しが飛び出すことがあるほど、気密性が高い。
「桐は、防湿性や防虫性が高く、着物や衣類だけでなく、食品の貯蔵にも適しています」
そう話すのは、「関根桐材店」(埼玉県本庄市)の4代目主人・関根紀明さん。
桐たんす市場は縮小傾向にあるため、関根さんは新しい桐製品作りを模索するなか、たんす職人の技を生かし、気密性の高い「桐の米びつ」を開発。精米直後に劣化が始まる米の風味が守れると評価は高かったが、売り上げは伸び悩んでいた。
「桐のよさをもっと若い人に知ってもらいたい。それには若い感性を生かした商品開発を進めなければ、と思ったんです」(関根さん・「」内以下同)
そこで、以前から交友のある芝浦工業大学デザイン工学科教授の増成和敏さんに相談。
「桐という日本の伝統的な素材を題材にして、学生たちにデザインの学習をさせたい」
と、意気投合。2015年5月から産学連携という形で、桐の特徴を学びながらさまざまなアイディアをまとめ、誕生したのが、食品収納箱「桐CUBE」シリーズだ。夏休み返上でデザインに取り組み、2015年11月に開催された「ニッポン全国物産展2015」に、試作品を出展した。
「コンセプトは“感謝の気持ちを籠こめる箱”。箱の角に配した三角形は、ふたを正しい方向で閉めて、きっちり密閉させるための目印になっています。落としぶたを採用したことで、劣化原因である外部の湿気や乾燥から二重に米を守ることが可能になりました。そして、仕上げ塗装に柿かき渋しぶを使用したことで、抗酸化作用と強度が高まり、機能性と実用性を兼ね備えた食品収納箱になりました」
受注販売ながら、発売から約1年で、米びつは300個、同形で11cm角のコーヒーキャニスターは約1200個を販売している。
湿気を嫌う乾物や、風味の劣化を防ぎたい茶葉など、嗜好品の保存にもおすすめだ。
※女性セブン2017年1月1日号