そして、ここからメディアを巻き込んだ騒動に発展していく。患者側と病院側の意見が一致せず、ガリシア予審裁判所による裁決にもつれ込むという、スペイン初の異例事態になったのだ。
まず、娘を苦しみから解放させるため、死期を早めるセデーションを家族側が要求。ガリシア倫理委員会は、両親の要求に合意。が、セデーション実行の圧力を受ける病院は、それに反対。最終的には、法的効力を持つガリシア予審裁判所の判事が、医師による胃ろうの取り外しを認め、少女に対する緩和的鎮静を無罪行為としたのだ。
子供を死に導く重大な決定を親が下すことについて、エステラには、何の迷いもなかったのだろうか。
「娘の声は、私の声です。私が誰よりも、アンドレアのことを理解していました。とにかく、彼女を苦しみから、いち早く解放させてあげたかったの」
10月7日、アンドレアへのセデーションが開始すると、2日目にして息を引き取った。生まれた時に誓った「死ぬまで愛す」ことを全うした彼女は、心の中で呟いた。
「あなたをこんなに愛していたなんて……。ありがとう、アンドレア」