学校について、校内にある和室であぐらをかいて祐太のインタビューをした。授業中にサインの練習をしているという。
「どんなサインか、書いてよ」
ノートを広げた私に祐太は「しまった」といい顔をした。
「あの、監督に知られたら怒られるんで……」
「見せへんがな。書いてよ」
私のノートに丁寧に、大きなサインを書いた。OOMINEの最初の「O」の字が大きくデフォルメされたサインだった。
「かっこええけど、一個書くのにごっつ時間かかってるね……」
「そうですね……」
プロ入りしたときの夢も教えてくれた。
「契約金で、じっちゃんとばあちゃんに、家を買う!」
それが祐太の最初の夢だった。そしてつぶやくように言った。
「じっちゃんとばあちゃんには世話になったから。恩返ししたい」
世話になったといっても、そのような境遇になったことに祐太の責任は1ミリもない。むしろおいじいさんとおばあさんの方こそ、彼らきょうだいに格別の思いがあろう。
それをこの子は「世話になった」というのだな。
「そんなん、お前が頑張ったら毎年二軒ずつ買えるぞ」
と私が励ますと、祐太は「あはは!」と嬉しそうに手を叩いて喜んだ。
そのとき私は決めたのだ。なにがあってもこの子の側に立つ、と。世間の奴らが馬鹿にしても、私はこの子の味方になる。