人間、時間があると何をすべきかわからず、大抵の人は生きがいや活力を失います。とくに男性は不器用なので、新しい環境に適応できず、新しい仕事を作れません。男性の高齢者がどう生きるかは、これからの日本の大きなテーマです。
僕は『思考の整理学』で、人間を自力で飛び上がることのできない「グライダー型」と、自力で飛行できるエンジンを備える「飛行機型」に大別しました。他人を真似するのでなく、自分の頭で考えて行動することの大切さを説きました。
しかし、『思考の整理学』はすでに過去のものです。この先は、グライダーや飛行機より、もう一つ上の「なにか」をつくり出したい。それは、歳を取ったからこそ発見できるもので、ある種の精神的な世界なのかもしれません。
年寄りが人生の最後において、「死ぬかもしれない」、「肉体が滅びるかも知れない」という予感について、「どうすれば死が怖くなくなるか」という地点まで思考や信念が及べば、人間として新しい真理にたどりつく可能性があるはず。
その真理を見つけるには、もう歳を取りすぎたかもしれないけれど(苦笑)、挑戦してみようと思っています。
●とやま・しげひこ/愛知県幡豆郡(現・西尾市)生まれ。東京文理科大学卒業。英文学から日本語論まで、専門分野は幅広く、毎年7~8冊前後の著書を発表している。
※週刊ポスト2017年1月1・6日号