◆世界ランキングではわからない本当の実力
こうなると楽しみになってくるのが2020年東京五輪での金メダルだ。日本卓球界の長年の悲願である打倒中国も現実味を帯びてくる。だが、圧倒的な強さを誇る中国の牙城をそう簡単に打ち崩せるものだろうか? このモヤモヤを解く鍵は東京五輪世代の勢力図にある。とりわけ世界との実力差が拮抗している女子に目を向けるとヒントが見えてくる。
例えばわかりやすいところで、「U18(18歳以下の部)」の世界ランキングを見てみると、昨年12月時点のトップ6は、なんと日本人選手が占めている。順位は1位の伊藤を筆頭に平野、浜本、早田、橋本帆乃香(四天王寺高校)、加藤という顔ぶれ。これに対し中国の最上位は王曼昱(ワンマンユ)の9位だが、あいにくこれは本来の実力を示すものではない。なぜなら現在17歳の王曼昱は中国ジュニア世代のエースと期待され、世界ジュニア選手権のタイトルは2014、2015年にとっくに制覇。2016年は出場せず、その時期は中国で真っ盛りのプロリーグ「中国超級リーグ」で主力として活躍していた。
昨年10月中旬から約1カ月間、中国超級リーグに参戦した平野がこの王曼昱と対戦しているがストレート負けを喫し、自身のSNSに「ワンマンユ強かったなぁ。このままでいかん」と書き込みをしている。王曼昱に限らず中国のトップ選手は技術やパワーもさることながら戦術に長けており、平野も帰国後、「中国の選手は対応力がすごい。他の選手ならずっと通じる戦法も、すぐに慣れて対応してくる」と証言している。
また選手層の厚い中国では、若手にワールドツアー出場のチャンスが回ってこない事情もある。そのため王曼昱も世界ランキングは低く、一般の部に至っては61位に低迷している。ちなみに日本人の最上位は石川の5位。伊藤は9位、平野は11位だ。1位はもちろん中国人選手。リオ五輪金メダリストの丁寧(ディンニンもしくはテイネイ)である。さらに2~4位も中国人が占めている。
これらの要素は一例に過ぎないが、ここ最近の日本の飛躍がそのまま打倒中国に直結するとは限らないことがわかるだろう。ただし、世界ナンバーワンの丁寧に昨年4月のリオ五輪アジア予選で伊藤が勝つなど、中国の背中を捕らえつつあるのも事実。しかし、中国以外のアジア勢や欧州勢の若手も伸びてきており、日本のライバルはもはや中国だけではなくなってきている。この現実を踏まえ、日本は中国勢のいない大会を取りこぼさず優勝することが必須。それなしには打倒中国の悲願成就、ましてや2020年東京五輪の金メダルは見えてこない。