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2017.01.13 08:00  SUUMOジャーナル

海外リモートワークの最先端[中編] プール付き豪邸が家賃11万円

写真/PIXTA

オフィスではない場所で働くことを許容する、いわゆるリモートワークを導入する企業が増えている。育児や介護など自宅を離れられない従業員のベネフィットというだけでなく、“好きな場所で働く”ことで高いモチベーションを生む効果もあるようだ。
そんなリモートワークを究極的な形で実践しているのが、尾原和啓さん。2015年4月に生活の拠点をインドネシア・バリ島に移し、以来、バリ―東京間でのリモートワークを続けている。なぜバリなのか? 日本の企業に属しながら、あえて海外で暮らすメリットは何なのか? 尾原氏に聞いた。

生活費が安い国だからこそチャレンジできる

尾原さんが実践する海外リモートワークについてインタビューした前編に引き続き、今回はバリ島・ウブドゥでの暮らし、住まい選びや街へのこだわりを伺った。

―― 一般的には勤務先を基準に住む場所を考えますが、尾原さんのようにリモートワークが許される仕事だとある意味どこにでも住めるわけですよね。その場合、何を基準にエリアを選ぶんでしょうか?

「僕の場合、海外に住むのが初めてだったのでコミュニティの中心にある場所を選ぶようにしました。それはつまり、僕のように海外からバリに来て、うまい暮らし方、賢い暮らし方をしている人が多いエリアですね。それからリゾートワーカーのハブになるワーキングスペースがあること。あと、僕は何でも食べられるんですけど、妻と娘は日本食が好きなので近くに日本食レストランがあること。それらの条件を満たす街の中からウブドゥを選びました。あ、それから家にプールがあることも条件のひとつでしたね。移住したのは娘が9歳のときなので、やはり行きたくないって泣くんですよ。『毎日プールに入れるよ』って言って何とかなだめたので、プール付きはマストでしたね」

―― プール付き! 豪邸ですね

「でも家賃は月11万円。ここだと10万円以上の物件ならプールが付きますね。生活コストはとにかく安いです。だから最近は、シリコンバレーのベンチャーなんかも初期段階ではバリを拠点にすることが増えてきていますね。サンフランシスコの家賃は高すぎるので、1億円くらい資金を集めてもオフィス代と人件費ですぐになくなっちゃうんですよ。だったら自分たちのビジネスが固まるまで全員でバリに行っちゃおうと。ここなら月7万円で衣食住すべて賄えます。シリコンバレーの4分の1から5分の1のコスト。ということは、4倍から5倍チャレンジできるわけです」

―― これからムーブメントが起こりそうな場所に住むのって、すごく刺激がありそうです。日本にいたときも、そういう面白そうな街を選んでいたんでしょうか?

「そうですね。日本では勤め先との兼ね合いもありましたが、ずっと六本木に住んでいました。今は少し状況が変わりましたけど、昔は飲み文化だったので六本木のクラブにすぐ行ける場所に住んでいることがアドバンテージになったんですよね。ゼロからイチが生まれる場所って昼1時の会議室じゃなくて、25時のキャバクラだったりするわけですよ。そのときに家が近いと、いつ呼び出されても20分以内に到着できる。銀座も渋谷もタクシーで20分ちょっとですしね。当時は夜な夜ないろんな人の呼び出しに応えていましたね」

子どもは無菌室で育てるより、ある程度の危険にさらしたほうがいい?

―― ただ、六本木となると子どもの教育上あまりよろしくないイメージもあります

「いや、じつはそうでもないんですよ。港区は公立の学校行政も医療支援も素晴らしいです。うちの娘が通っていた港区の小学校はハーフの方や帰国子女の方を受け入れる実験校で、日本語と英語の両方で授業をするんです。普通の公立の小学校なんですけど、語学や国際感覚が身に着く。ちなみに、娘の親友はスウェーデン人です」

―― とはいえ、治安が……。繁華街もあるし、心配じゃないですか?

「これはおそらくいろ色んな人に反発される思想だと思うんですが、僕は子どもにとって一番大事な要素は“ストリートスマート”だと考えているんです。ようは街の中での賢さです。ハッキリ言ってうちの娘ってかわいいんです。だから繁華街なんか歩くと『やあ●●ちゃん、いつになったらウチの店で働いてくれるの?』とか、際どい声掛けをされたりする。そこで、そういう欲望にさらされながらの処し方というか、処世術を身に着けていくんです。本当に危ないエリアには立ち寄らないようにしようとか、自分で考えるようになるんですよね」

―― 確かに、無菌室で大事に育てるより、たくましく成長しそうな気がします

「時代が安定していて放っておいても成長するボーナス期であれば、できるだけ無菌室の中でピュアに能力を発揮する力が大事かもしれません。でも今や変化する時代でトラブルが起こることが当たり前。30点しか実力が発揮できない環境の中で120%の結果を出す能力が大事なわけです。それに、チャンスってリスクとギリギリの狭間にいっぱいあるんですよね。それをどこまでなら安全で、どこまで踏み込むと危険かっていうのは己で知っておかないといけない。そういう能力ってやはり、ある程度自分の身を危険にさらしながら身に着けるしかないと僕は思っています」

―― 日本から海外へ。多感な時期の子どもにとっては大きな変化だと思いますが、子どもをひとつの土地で育てるのと、いろんな場所を転々とするのとではどちらのほうがいいんでしょう

「それは僕自身もやりながら試しているというのが正直なところです。でも、孟母三遷(もうぼさんせん)じゃないですけど、孟子のお母さんが孟子の成長ステージに合わせて引越しをしていったように、成長というのは『刺激』×『フィードバック』だと思っています。自分でフィードバックする量を高めるのって限界があるので、刺激を増やしたほうがいい。刺激を増やすのに一番いいのって環境を変えることなんですよね。だから、ある程度は引越ししたほうがいいんじゃないかと思います。
もちろん誰かと深い関係を育むってことも大事ですし、そのためにはある程度場所に縛られてしまう。ただ、幸いなことにうちの娘の場合は小学生のときに3年間友情を育んだスウェーデン人の親友と今も仲良しで、日常的にLINEで交流したり、週末になったらビデオ会議で雑談したりしています。夏休みになったらスウェーデンに遊びに行ったり。ある程度深い関係を一度つくってしまえば離れていてもその関係は続いていくし、むしろ離れていることがお互いの刺激になるんじゃないかな。娘で実験中です。彼女にとっては迷惑だと思いますけど結果よかったと思ってもらえるんじゃないかと模索してます」

世界各地に家を持ち、短期間で点々とする生活をしたい

―― 尾原さんは今後もずっとバリで暮らしていく予定ですか? それともまた別の国に引越したいと思いますか?

「もし制度や環境が整うなら、世界各地に拠点をつくって短期間でいろんな場所を転々とする生活をしてみたいです。日本でも年180日以下なら民泊を解禁する方向で進んでいますが、そうなれば東京とバリの両方に家を借りることがリスクじゃなくなる。バリにいるときは東京の家をAirbnbで人に貸して、東京にいるときはバリの家を貸せば家賃1軒分で済みます。さらに、例えばシンガポールに家族で行っているときは東京とバリの家を両方貸せるから、シンガポールのホテル代も稼げる、つまり世界中どこにいても家賃1軒分でいけるわけです。ホテル暮らしより自分で借りた部屋のほうがWi-Fiの環境もいいし、くつろげるぬいぐるみがあったりとか、お気に入りのコップがあって居心地いいですしね。そうなるともはや引越しという概念はなくなって、常に2カ所、3カ所をぐるぐるするっていう暮らし方が普通になるかもしれません」

―― そういう人が増えていけば、知り合い同士で家を貸し借りするっていうことも可能になるかもしれませんね

「実際、今はAirbnbもセグメント化していて、作家とかクリエイターの中である一定の基準を超えた人同士だけが家の交換をし合えるっていうシェアリングのサークルもあるんですよ。自分の家を全く知らない他人に貸すのは不安ですが、お互いにクリエイター同士、信頼のおける仲間同士でシェアするクローズドなAirbnbです。いずれにせよ、これからは所有するのではなく、お互いがいいものを借り合う、シェアするっていう方向に進んでいくはず。いずれは家もそうなると思いますね」

聞けば聞くほど先進的な住まい観である。尾原さんのように仕事にさえ縛られなければ、人生はかくも自由になるものなのかと感心させられる。だが、それができるのは一部の特殊な人間だけではないのか? 次回は、尾原さんのような生き方を実践するために必要なことを伺っていく。

●取材協力
尾原和啓(おばら・かずひろ)さん
シンクル事業長、執筆・IT批評家、Professional Connector、経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー。
京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を歴任。現在13職目 、バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディション、Burning Man Japanに従事。著書に「ザ・プラットフォーム」(NHK出版新書)、「ITビジネスの原理」(NHK出版)がある(榎並 紀行(やじろべえ))

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