また、すみれをはじめとする主要キャラクターに「今イチ共感できない」という声が多いのも事実。みずみずしい女学生時代、ドラマティックな結婚・出産、厳しい戦時中の様子をほとんど描かず、超ハイペースで終わらせたことで、「視聴者がヒロインたちへの共感を育むタイミングがなかった」とも言えます。近年の朝ドラに比べて熱狂的なファンが少ないのはその影響があるのでしょう。
ネットメディアが採り上げないのは、「イケメン俳優が少ない」のも理由の1つ。『あさが来た』のディーン・フジオカさんや瀬戸康史さん、『とと姉ちゃん』の坂口健太郎さんや大野拓朗さんのようなフレッシュなイケメン俳優が少なく、唯一の存在だった岩佐栄輔(松下優也)も早々に退場してしまいました。ただ、栄輔は再登場が予告されているだけに、そのタイミングでは話題を集めそうです。
また、ドラマ全体を“穏やかで優しい”世界観で統一されているのも、トピックスが生まれにくい理由の1つ。実際、『あさが来た』の眉山惣兵衛(柄本佑)、大久保利通(柏原収史)、サトシ(長塚圭史)、『とと姉ちゃん』の青柳滝子(大地真央)、花山伊佐次(唐沢寿明)、赤羽根憲宗(古田新太)のような個性的なキャラクターがぶつかり合うシーンが少なく、“女性たちの仲良し物語”と思われがちなところがあります。
ただ、『べっぴんさん』が「前2作よりも面白くない」ということは決してありません。脚本の渡辺千穂さんが、「毎朝見終わったあと、人に優しくしたくなるドラマにしたい」と話していたように、これまでの15週間は、人間の良心や身近な人々とのつながりを丁寧に描いてきました。