ただし問題は、塩分を摂っても血圧が「上がる人」と「上がらない人」がいることだ。 前出の石原さんが言う。
「食塩を摂取すると血圧が上がるか上がらないかは、その人の食塩感受性に関係があります。食塩感受性が高い人は腎臓からナトリウムを排出する機能が弱く、塩分を摂取すると血圧が上がります。1995年の東大の藤田敏郎教授(当時)の調査では、日本人のうち食塩感受性が高い人は約2割、低い人は約5割とされます。つまり、日本人の2人に1人は塩分を摂っても血圧が上がらないんです」
それなら塩分をいくら摂ってもいいかというと、そうではない。ここで注意すべきは、どんな人が食塩感受性が高いのかは不明だということ。とはいえ、石原さんは漢方にヒントがあると話す。
「漢方の知見では、色白で冷え症の人(陰性体質)は食塩感受性が低く、色黒で暑がり体質の人(陽性体質)ほど食塩感受性が高くなります。一斉に減塩するのではなく、こうした体質もふまえて塩分摂取量を考えるべきです」
日本高血圧学会・減塩委員会委員長を務める、製鉄記念八幡病院の土橋卓也さんは、同じ人間でも食塩感受性は変化すると指摘する。
「食塩感受性は生涯一定ではなく、加齢や疾患により変わります。高齢者やメタボリック症候群、腎臓の悪い人は食塩感受性が高くなるとされるので、こうしたかたがたはより減塩を頑張るべきです。
また、塩分は高血圧だけでなく骨粗しょう症や脳卒中などのリスクを高めるので、その意味でも“減塩しても血圧が下がらないから塩を控えなくていい”という考えは間違っています」
坂東さんも「高血圧治療の基本は減塩」と強調する。
「確かに塩分摂取が血圧上昇に結びつかない人もいますが、すでに血圧が高い人はまず減塩すべきです。食塩感受性があれば塩分を摂取すると血圧が上がるわけで、血圧が高い人は『1日6g未満』を目標に減塩を行えば、高い確率で血圧は下がります」
※女性セブン2017年1月26日号