「100万人デモ」を扇動してきたメディア界もまた熱しやすく冷めやすい。左派系は別にして、今年は「朴槿恵はもう終わった」となって“朴槿恵魔女狩り”ムードから現実に立ち返ることになろう。
その際、世論は、トランプの大統領就任式や米韓首脳会談に大統領を送り出せない韓国の弾劾状況を大いに寂しがることになるだろう。トランプ時代の到来を前に、保守派はこの“米国カード”を局面転換に効果的に使える。
したがって左翼・野党陣営も「100万ロウソク・デモ」のノリを、そのまま選挙に向け親北・反米に持っていくことは必ずしも簡単ではない。ロウソク・デモの“バブル部分”は決して親・北朝鮮でも左翼でもない。反米でまとまるはずもない。扇動家・李在明のバブルもそのうちしぼむ。
韓国世論はこのところ、内政の混乱のなかで宿敵・日本の安倍政権の安定感と日米蜜月ぶりを強く印象付けられている。新年は国際的に日本の存在感をさらに意識することになろう。反日のメリットは当面、国益上はまったくないのだ。ポスト・朴の韓国は国内的な変化志向の一方で、安保や経済などで対外的には安定志向にならざるをえない。
トランプだって当選後は現実を前に前言を翻している。いささか綱渡りにはなるが、韓国の文在寅をはじめ野党陣営だって、当選後もそのままなどということはありえない。
●くろだ・かつひろ/1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。
※SAPIO2017年2月号