山崎豊子さんの小説が原作の『白い巨塔』の2人といえば、野心家で望むものはすべて手に入れてきた財前五郎(唐沢寿明)と、権威には無頓着で正義感が強い里見脩二(江口洋介)。
『振り返れば奴がいる』でも、傲慢かつ自己中心的な天才医師・司馬江太郎(織田裕二)と、患者思いの熱血漢・石川玄(石黒賢)との衝突が話題を呼んだ。
そして第三は、「愛する者のオペで、医師は医師のままでいられるか」という命題だ。壮大は、脳腫瘍が発覚した小児外科医で妻の深冬(竹内結子)のオペは「家族としてできない」と、親友の沖田に頼む。しかし実は沖田にとって深冬は研修医時代の元恋人。私情をはさまずメスを入れられるのか。
『Dr.コトー診療所2006』の最終回でもこんなシーンがあった。五島健助(吉岡秀隆)は、乳がんにかかった看護師・星野彩佳(柴咲コウ)のオペをするが、予期せぬ出血で動揺してしまう。そのとき鳴海慧(堺雅人)から「目の前の患者を星野彩佳と思うな。1人の乳がん患者と思え」と言われる場面があった。鳴海もまた、心臓発作で倒れた妻を周囲の反対を押し切って自ら執刀したものの、冷静さを失ってミスを犯し、植物人間にさせてしまった過去があった。『A LIFE』もこのように、ヒューマンドラマの要素も兼ね備えている。
他にも『医龍』でいうところの小池徹平が、今作の松山ケンイチにあたるなどいろいろ共通点も多いが、かえって、既存の医療ドラマを脱していない印象がある。
◇テレビドラマ初の東京医師会監修などリアリティ追求