塩分の摂りすぎが、胃がんや骨粗しょう症、尿路結石などの原因になるというが、塩分摂取の影響を受けやすい人と受けにくい人がいるという。
塩分摂取の影響で血圧が変動しやすい“食塩感受性の高い人”もいれば、塩分摂取や減塩の影響を受けない“食塩感受性の低い人や食塩非感受性の人”もいる。つまり、同じ高塩分の料理を食べたとしても、血圧が上がりやすい人とそうでない人がいるのだ。日本高血圧学会の減塩委員会協力員でもある渡辺尚彦さんは次のように解説する。
「食塩感受性タイプの人は、腎臓でのナトリウム再吸収が多くて排泄機能があまり働かず、塩分の影響を強く受けます。これに対し、食塩非感受性タイプの人は腎臓でナトリウム排泄機能が働くため、血圧が塩分摂取の影響を受けにくいのです」(渡辺さん)
つまり、減塩で血圧低下が期待できる人と、減塩しても改善できない人がいる。大阪大学寄附講座教授で高血圧治療のエキスパートの森下竜一さんが説明する。
「日本人の場合、正常血圧者の15~26%、高血圧患者の30~50%が食塩感受性といわれており、日本人は世界的にみて、食塩感受性の割合が高い国民性とされています」(森下さん)
欧米より食塩感受性の比率が高いとはいえ、それが高血圧の人の5割以下と聞けば、「減塩しても、あまり意味がないんじゃない」と思う人がいるだろう。しかし、決してそうではない。
「そもそもあなたに食塩感受性があるかどうかを、知ること自体難しい。それに、遺伝的に両親のどちらかから食塩感受性を受け継いでいる人も多く、特に高血圧の人は、可能性が高いのです。
一方の食塩非感受性タイプの人でも、塩分摂取過多を続けると、アルドステロンというホルモンが活性化し、心臓や血管、腎臓に障害をもたらします。また、胃がんや腎臓病、骨粗鬆症は、高血圧でなくても、食塩摂取それ自体でリスクが上がることを忘れないで」(森下さん)
日本人の死因のトップは胃がんを含む悪性新生物だが、高血圧系疾患は全体の約4分の1を占める。その点からも、減塩するにこしたことはない。
「また、食塩感受性は体調や年齢によって変化します。メタボや加齢、腎臓が悪くなった場合は食塩感受性が高まります」(森下さん)
食塩感受性が高い人は、減塩で最高血圧を2mmHg下げるだけで、脳卒中や循環器疾患での死亡リスクが低減できる点も忘れないで。
※女性セブン2017年2月9日号