まずタクシー運転手になるには「普通二種」という免許が必要だ。合格率は40%程度だが、いったん取得すれば更新に年齢制限はない。

 ポイントは免許更新の際、普通一種にはない「深視力検査」が課せられること。3本の棒の真ん中の1本が前後に動き、ちょうど3本が横一列にならんだところでボタンを押す。遠近感をチェックする検査で、3回続けて平均誤差2センチ以内でなければ合格できない。

「慣れないと難しいが、実は、何度失敗してもいい。高齢者の方など、失敗を重ねながらタイミングのコツをつかみ、3回続けて成功するまで挑戦している。この試験で不合格になったという話はほとんど聞いたことがない」(深視力試験の体験者)

 免許更新より厳しいといわれるのが法律で義務づけられた「適齢診断」だ。タクシー運転手が国の機関「自動車事故対策機構(NASVA)」で視聴覚機能や判断力などのテストとカウンセラーの指導を受ける。65歳以上は3年に1度、75歳からは毎年適齢診断が課せられる。

 ただし、こちらも診断結果が悪くても免許が剥奪されることはない。NASVA安全指導部の説明だ。

「テストは本人に加齢でどういう機能が衰えるかを自覚してもらうのが目的。警察から二種免許を取得して運転の権利を得たプロですから、カウンセリングで“あなたは運転してはならない”とは決して言ってはいけないことになっている。あくまでも会社に診断表を出して、会社が運転手への指導法を考えるという制度です」

 運転能力が低下しているか否かを判断するのは運転手自身で、能力低下があっても制度として“免許召し上げ”のルールはないのだ。

※週刊ポスト2017年2月10日号

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