私みたいな地下アイドルにも、ほとんどのライブに応援しに来てくださる熱心なファンの人達がいて、彼らには仲間意識のようなものすら感じています。しかし、舞台に立つ仕事をしている以上、あくまで私は出演者であり、ファンの人は観客です。物販の時間やツイッターでは、友人のように接していても、私には彼らに格好良いところを見せるのが仕事です。
そのためには、普段の、短い出演時間のライブを積み重ねて、時には集大成として大きな舞台に立つことも大事なのです。
特に私の場合は、文章を書く仕事をしているイメージから、イベントに司会役として呼ばれることも多いため、舞台で自分のことを話す機会が他の地下アイドルの子と比べて少ないです。ファンの人はそういうところも好きでいてくれているとは思うのですが、会う時間は限られているので、時々、私的なことも聞きたいと言われます。文章でも個人的なことをあまり書かないので、たまには応援してくれるファンの人へ恩返しになればと思い、ワンマンライブの開催に踏み切りました。やはり、いろんな仕事をしていても、地下アイドルの基本活動はライブなのです。
■ワンマンライブは、ファンにとっても晴れ舞台?
普段のライブだと出演時間が短いので、そのアイドルに興味があっても「たった20分かあ」とライブ会場へ行きづらくても、ワンマンライブならばたっぷり楽しめそうだから足を運んでみようと考える人は多いです。私のワンマンライブも、開催のきっかけはファンの方への恩返しでしたが、普段のライブよりずっと多くのチケットが売れています。いつもライブに来てくれるファンとは、また別の人たちがチケットを買ってくれているようです。
当日は、私を初めて見る人もいれば、地下アイドルのライブ自体が初めてという人もいると思います。初めてのライブは、どんなところだろうと少し身構えた気持ちでいるかもしれません。でも、ワンマンライブの場合は、地下アイドルのライブに慣れているはずの人たちも、いつもと少し違った気持ちになっています。
先日、物販の時にファンの方から、「たくさんの人が見に来るの、怖くなってきました」とワンマンライブについて言われました。
どうして観客が怖がるのかと思うかもしれませんが、地下アイドルのライブは、ファンの掛け声や手拍子などもパフォーマンスの一部です。いつもライブに来ていて、掛け声などを把握している熱心なファンにとっては、自分が出演するようなプレッシャーがあるのでしょう。
同時に、娘の発表会を見守るような緊張感もあると思います。当の本人である私が口にしてはいけない緊張を、素直に言ってくれて、いいファンを持ったんだなあと嬉しく思いました。熱心なファンはだから、観客でもあり、仲間のようなものでもあります。
「ワンマンライブに行くなら普段のライブで予習してから行きたい」「ワンマンの日は試験のような気持ちでのぞみます!」など、尋常じゃない意気込みをみせるファンの方もいて、微笑ましく思いました。地下アイドルのワンマンライブは、地下アイドルと熱心なファンの熱気を感じるのも楽しみ方のひとつです。
地下アイドルは楽器を演奏するわけではないので、会場の規模によっては、目立とうとして変なタイミングに大きい声を出すことで、地下アイドルより目立つこともできます。その一線を越えずに、会場を盛り上げながら応援できるところが、アイドルファンの特殊技能です。地下アイドルファンの「空気を読む力」には、目を見張るものがあります。
ワンマンライブの開催は体力的にも精神的にも大変だったからか、気づけば前回から5年の月日が経ってしまいました。3回目にあたる今回のワンマンライブは、前回のワンマンライブから、会場の規模が倍になっています。それだけ、多くの人が観に来てくれるので、あまり私のことを知らない人や、初めて見る人にも楽しんでもらえる舞台にすることで、ファンの方への恩返しと、成長を見せる目標を果たせればと思います。
私のワンマンライブに拘わらず、地下アイドルのワンマンライブで、客席の熱気を感じ、人が頑張る姿を観ることによって、きっと新しい面白さと楽しさを発見できると思います。