リコール連発で手痛い失策となったが、「フィット」をはじめとするコンパクトカー向けのハイブリッドシステムはドイツの部品大手、シェフラーのアイデアによるもの。また、情報筋によれば次世代の先進安全システムも日本企業、ドイツ企業の製品をパッケージ買いする方針だという。先端技術の開発を外出しし、クルマとしての良さで勝負するというこのやり方は、まさに小規模メーカーの戦略と言える。
今、まだ実現にはほど遠い状態の完全自動運転をはじめ、低価格化、コモディティ化することが想像もできない最先端の技術が下に降りてくる時代がゆっくりとやってくれば、ホンダは巨大勢力に圧倒されて生きていけなくなるということはないだろう。500万台という規模は、小規模メーカー的な戦略をとるうえでは相当に強固なバッファとなる。
だが、世界の巨大陣営が次々にものすごいイノベーションを起こし、急速に不可能が可能になるような状況が起こったときは、ホンダはいずれかの勢力の軍門に降らなければならなくなる。
「そうならないためには何をやればいいかという長期ビジョンを社内で策定中なのですが、本来はとっくに決まっていなければならないはずなのにいまだに決められないでいる。ここを乗り切らないと、ウチの未来はない」(ホンダ幹部社員)
トヨタとスズキの歴史的な融和でひとつの節目を迎えた自動車業界。戦後長らく群雄割拠が続いてきた自動車業界の戦国時代がどのような形で終わるのか。そのとき、ホンダはホンダとして生き残ることができるのか。その最後の決戦から目が離せない。