「例えば、飛行機の場合は空港から空港への輸送義務しかないため、到着が大幅に遅れたとしても、目的地の空港に着けば、義務を果たしたとみなされるため、基本的には空港から先の交通費は出ません。仮に深夜空港に到着し、目的地までの交通機関が動いていない時間になったとしても、原則としてタクシー代は出ませんし、宿泊の場合も代金は個々人で負担することになっています」
「非難する前に、北海道特有の交通事情を知ってほしい」。そう訴えるのは、北海道大学で地方の活性化や地方経済や交通について研究している小磯修二教授だ。
「雪の深いところで、冬場の交通は非常に大きな問題です。先進国かつ人口100万人以上の都市で、こんなに雪が降る場所はないです」
北海道においては鉄道はもちろん、飛行機の欠航も頻繁に起きるし、ひとたび雪が降れば、バスの時刻表はあてにならない。
「東京だと地下鉄や私鉄なんか他の路線がたくさんあるから電車での振替輸送が可能だろうけど、こっちはJRしかないから、それが運休したら、頼れる交通手段はバスかタクシーしか選択肢がない。東京の人はタクシーなんてぜいたくって思うかもしれないけど、選べるものがそれしかないんだからしょうがない」(滝川市のタクシー運転手)
さらに「タクシーはぜいたくだ」と、外で復旧を待ったり、雪の中を歩くのは危険だ。
「吹雪の強かった日、100m先のわが家にたどり着けなくて亡くなった友人がいました。また、今回の遅延となった『信号機トラブル』も大本の原因のほとんどは、路線のセンサーがついている部分に雪が挟まってしまうことだと聞きます」(北海道出身者)
実際、記者が取材した日もタクシーに乗った昼間は晴れていたものの、夕方から少しずつ雪が降り出し、夜には1分外に立っているだけで髪が雪で真っ白になってしまうほどの悪天候に。視界がぼやけ、10m歩くのもつらい。
しかし、地元民に「今日はお天気悪いですね」と言うと「こんなの降っていないのと同じ」と鼻で笑われた。
天気のよかった昼間でさえ、積もった雪の中から足場になりそうなところを探し、「ブラックアイスバーン」に気をつけながら歩くため、かなり時間がかかった。慣れた様子で、すたすた歩く高校生に、なんとかついて行こうと頑張るが、歩くスピードが追いつかず、「これだから東京の人は…」と苦笑された。
「天気予報をこまめに見たり、電車が遅れるならば早めに家を出たり車を使ったり…そんなふうに知恵をしぼって日々生きているのが、北海道の現状なんです」(前出・小磯さん)