タクシー業界に70歳超の高齢ドライバーが数多くいる現状を浮き彫りにした本誌・週刊ポストの前号記事(2017年2月10日号)は、業界に衝撃を与えた。
この高齢ドライバー問題についてタクシー会社側の反応は鈍く、前号では本誌アンケートに対する回答も少なかった。そこで、改めて主要30社に質問項目を広げて再調査を行なった。
タクシー運転手の高齢化は、業界が抱える構造的な問題である。しかし、今回のアンケートでも約半数の13社から回答が得られなかった。この問題に関して、経営者はどう考えているのだろうか。
34歳の若さで業界最大手・日本交通の社長に就任し経営改革を行ない、現在は同社会長と東京ハイヤー・タクシー協会会長を務める“タクシー王子”こと、川鍋一朗氏(46)が、書面による一問一答に応じた。
──業界全体として、高齢運転者の増加に、どのような対策を取るべきか。
「高齢ドライバーに対しては、まずは健康管理や運転適性診断・カウンセリングの充実を図り、勤務時間、労働時間管理の徹底に取り組んでいます。また、安全性能の高い次世代タクシー車両の導入も進めています」
──正社員運転手の定年退職の年齢は、何歳が適齢か。
「個々人の運転適性能力、健康状態に大きな差があるため、画一的に線を引くのは難しいと思います」
──運転手が高齢であることは、営業面でのデメリットはあるか。
「長年の社会経験や地理の知識は業務へ活かすことができることから、高齢であることそのものによる営業上のデメリットは少ないと思いますが、ただし接客業としての意識を持ってサービスを提供していくことが前提だと思います」
もちろん、高齢運転者を一括りにして、安全面で問題があるというつもりはない。実際には、長年の乗務経験を積んだ優良ドライバーもいる。
77歳の法人タクシー運転手が語る。
「まだまだ運転できると思っているけど、年齢が年齢だけに万全の対策は取っている。毎月眼科に行って検査してもらい、老眼鏡もつくりました。無理な運転はしないようにしています」
個々のドライバーの意識だけでなく、各社の責任を持った対策が求められている。
※週刊ポスト2017年2月17日号