ただし日本ではこの「検査・診察・手術」の三位一体を体現している医師は決して多くない。町には眼科医院があふれている。国内において、医師全体における開業医の割合は約36%だが、眼科医に限れば約63%にのぼる。

「日本では、手術設備すら揃えていない個人病院がほとんどです。手術用の機器を持たなければ、最低限の検査機器を揃えるだけで済む。初期費用はだいたい2000万円ほどです。外科手術をしなくても、眼科の開業医は検査代や薬代、メガネやコンタクトレンズの処方だけで年間数千万円ほどの売上高があるのです。

 また、患者に手術が必要となれば大学病院への紹介状を書いてやり過ごす。そこでも『診療情報提供料』という名目の保険点数が発生し、開業医の収入になります。手術のリスクを負ってまで、技術を高めなくても潤う構造的矛盾がある。それが総じて日本の眼科医療のレベルを下げてしまっているのです」(同前)

【プロフィール】ふかさく・ひではる:1953年、神奈川県生まれ。滋賀医科大学卒業。1988年、深作眼科を開院。現在も横浜本院、六本木院にて診療・執刀を行なう。著書に『やってはいけない目の治療』(角川書店)、『視力を失わない生き方』(光文社新書)などがある。

※週刊ポスト2017年3月3日号

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