◆病院によって解釈は異なる。信頼できるのはどちらか?
「眼底検査」は、眼球に光を当てて、眼底の状態を確認する。白内障の場合、水晶体に濁りがあり、緑内障であれば視神経乳頭のへこみが広がっていることが多い。
そして「屈折検査」は、近視・遠視・乱視などを調べ、その度数を測る。医療ジャーナリストの小林佳代氏がいう。
「『視力検査』や『屈折検査』で眼病が特定されることはほとんどない。『眼圧検査』も緑内障以外には有効ではありません。多くの疾患を特定するのは『眼底検査』だといわれています」
A、B両院で、この4つの検査は同じようなやり方で進んだ。しかし、差が出たのはここからだった。A病院の初老の眼科医は、顕微鏡をしばらく見た後、「現時点で異常なし、経過観察しましょう」と記者に告げ診察を終えた。
一方のB病院は、「眼底検査の結果、極めて初期の白内障の可能性がある」と所見を述べたうえで、新たな検査を提案した。「細隙灯顕微鏡検査」なるものだ。色つきの目薬をさしたうえで眼底検査よりもさらに細い光線を目に当て、眼球の傷などを仔細に確認する。結果、診断は「初期の白内障」だった。
深作氏は、眼科以外に複数の診療科を提示するAのような病院に懐疑的な目を向ける。
「日本の医療制度では、開業の際に専門とする領域を医師の好きなように記載できる。たとえば、内科の勤務医が“患者が増えるから”と『内科』に加えて『眼科』を掲げ、開業することもあります。眼科手術の経験がほとんどない“眼科医もどき”のケースも多いのです」
「とりあえず経過観察」と口にする頻度が多い医師も注意が必要だという。