「これはスシローだけの問題ではありませんが、多くの魚介類を海外からの輸入に頼る回転寿司業界にとって、為替の影響を受けて利益を圧迫しかねないリスクを常に抱えています。たとえ日本近海であっても、昨年サンマが不漁だったように韓国や台湾、中国に獲り負けてしまう状況も起きつつあります。
魚が獲れないならサイドメニューのさらなる充実をと考えるでしょうが、すでにあらゆるジャンルのメニューを出していますし、ただでさえ人材難の中でこれ以上手間のかかる商品を開発するのは限界があります」
肝心の出店戦略も思うように進むとは限らない。スシローは3年で100店舗増やす計画だが、国内市場はすでに飽和状態になっていると指摘する向きもある。
「回転寿司は郊外のファミリー客狙いであちこちに出店を重ねてきたが、かっぱ寿司がやみくもに出店して不採算店を多く出してしまったように、郊外でも利益の取れる好立地はそうそう残されていない」(外食コンサルタント)
そんな間隙を縫って、ゼンショーグループの「はま寿司」がスシローを超える出店攻勢をかけるなど、同業他社との陣取り合戦も一層熾烈になっている。
「最終的には、10円の違いでも敏感に反応する消費者にどれだけ魅力的な商品を出せるのかが勝負といえます。上場するスシローも定番商品の強化を含め質の追求を怠れば、売り抜けた投資ファンドだけが潤い、その他の株主がやせ細っていく結果になりかねません」(中村氏)
前出のかっぱ寿司が居酒屋チェーンを数多く展開するコロワイドの傘下に入ってもなお、赤字に苦しんでいるように、大手チェーンといえども予断を許さない状況が続く回転寿司業界。スシローの上場が、新たな再編劇を呼ぶ可能性も秘めている。