「大川さんは東大法学部卒で総合商社に勤務経験がある異色の経歴から、当時、『平成の教祖』として話題になりました。幸福の科学は基本的に大川さんという生きた人間を崇拝する宗教団体です。大川さんには生死を問わず誰の霊でも呼び出せる能力があるとされ、さまざまな人物や神などの言葉を集めた『霊言集』を数多く出版しています。

 信者は、比較的裕福で知的なかたが多いという特徴があります。幸福の科学には教義をどれくらい理解したかを調べる仏法真理学検定というものがあり、信者は特定の神を拝むだけでなく、熱心に勉強して知的な満足感を得る。自分を高めることに喜びを感じる“意識高い系”が多い印象です」

 1990年代に入ると教団に変化が見られるようになった。

「初期の頃は大川さんを中心に霊界や心のあり方についての勉強会や講演会を行う団体でしたが、1991年3月に宗教法人格を取得すると、大規模教団を目指すようになりました」(藤倉氏)

 宗教法人化からわずか4か月で幸福の科学の信者数は152万人を超えたと発表され、同年7月には、大川氏の誕生日を記念する「御生誕祭」が東京ドームで開催された。

 この時、大川氏は自身が神であり、仏陀の生まれ変わりでもあるという「エル・カンターレ宣言」を行った。

 同年9月には、幸福の科学の信者だった女優の小川知子と作家の影山民夫氏が中心となり、教団を批判する記事を掲載した写真週刊誌『フライデー』及び講談社への大規模な抗議活動を行った様子が連日テレビでも放送された。

「こうした強硬な姿勢が世の反感を買い、幸福の科学は従来の新宗教と同じく人々から警戒される教団となりました」(島田氏)

 バブル時代に出現したもう1つの注目すべき新宗教団体が、1987年に麻原彰晃が設立したオウム真理教だ。

「高度経済成長の時代に発展した新宗教とは対照的に、オウムは経済的な豊かさを求めることを煩悩として否定し、ヨガなどの厳しい修行で精神性を高めることを求めました。このため、“金がすべて”というバブル的な価値に反発し、現実の社会に生きることに虚しさを感じて、“自分探し”を求める人々がオウムに魅了されました。こうした信者に対し、オウムは現世を離れる『出家』を求めました」(島田氏)

 オウムの信者には難関大学の出身者や医師、弁護士など社会的地位の高い若者も多かった。

『A』などオウム信者に迫ったドキュメンタリー作品を数多く撮影した映画監督の森達也氏が、オウム台頭の理由を解説する。

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