食事をしながら飲む缶チューハイの定番ブランドを目指して商品訴求を続ける『-196℃ストロングゼロ』は3120万ケースの販売実績(2016年)を叩き出し、キリンの氷結に肉迫するまでになった。
また、上質な果実のコクを追求した『こくしぼり』や、軽やかなアルコール度数と味わいで女性ファンも多い『ほろよい』は、より付加価値を高めたプレミアムシリーズを発売。幅広い年代、飲用シーンを想定した全方位の商品群でキリンに対抗する。
実は、キリン、サントリーが缶チューハイ市場の拡大と激しい顧客争奪戦を繰り広げているのは、将来を見据えた“布石”ともいえる。経済誌『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏が話す。
「キリンとサントリーの2社は、アサヒやサッポロに比べてビール系飲料に占める『ビール』の割合が低く、価格の安い発泡酒や第三のビールを数多く販売して利益を稼いでいます。
しかし、今後10年がかりで行われる酒税改正では、ビールが減税になって発泡酒や第三のビールが大幅な増税となる見込みなので、これまで『懐にやさしいから』との理由でビール系飲料を買っていた層が離れていく恐れがあります。
そこで、流出したビール類の消費者を繋ぎ止めておくためには、缶チューハイやワインなど、それ以外の酒で勝負するしかないのです」
確かに、第三のビールでみると、2026年までに1缶26円値上がりするのに対し、缶チューハイなどの低アルコール飲料は7円の値上げにとどまる。
キリンとサントリーにとって価格に敏感な“ビール党”を失うのは大きな痛手だが、見方を変えれば、酒税改正を機に“缶チューハイシフト”をさらに加速させられるチャンスでもある。